質問「『新型転換炉計画の見直しについて』他

(平成7年11月1日参議院科学技術特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 新進党の山崎力でございます。
  さきの七月の選挙の際の初当選組でございますし、委員会の質問というのも初めてでございますので、未熟な点とかあるいは今まで既に論議済みで解決済みというような点も若干あるかもしれませんが、その点はお許し願いたいと思います。
  科技庁の一番の問題、課題である原子力行政に関してこれから若干質問させていただきます。
  まず、この問題の大前提としては何より安全性の確保というものがございまして、これを抜きにしてはすべての問題は前に進まない。それを前提とした上で、今後の問題としてですが、これから若干経済性というものも考えていかなければいけないのではないだろうか。その際、いわゆる政府側、科技庁側と、若干前に楢崎委員の方からも出ましたけれども、いわゆる民間側といいましょうか、そういった側とのすり合わせ、情報公開というものがこれから国民に対しての理解を得る上で必要になってきたんではないかという問題意識を持っております。
  そういう観点からこれから若干進めていきたいと思いますが、まずそれとはちょっと違うんですけれども、今問題になっております熱核融合の問題、この実験炉を国際協力として我が国に誘致するやの報道その他がございます。我が国を初めアメリカ、ロシア、欧州といったところで国際協力をして核融合の研究を進めようということだそうでございますが、その際の我が国政府としての基本姿勢、それからトリチウムを取り扱うという観点からの安全性の確認の問題、そしてこれからの見通せる範囲のスケジュールというものをお伺いしたいと思います。

○国務大臣(浦野烋興君) 安全等につきましては、若干技術的な点がございますので局長の方から答弁をいたしますが、核融合、これは科学技術庁としてというより政府といたしまして、二十一世紀のエネルギー問題の解決に大きく貢献する、この認識からいたしまして、このITER計画には積極的に取り組んでおるところでございます。現在の段階におきましては、工学設計活動、これは七月末に設計の中間的報告書案が提出されておるところでございます。
  お話しのとおり、今四極で共同して研究を重ねておるところでありますけれども、来年に至りまして、来年初頭からできるであろうと思っておりますけれども、その建設に関しての協議を進める段階に入っております。
  あと局長の方から補足させていただきます。
○政府委員(岡崎俊雄君) 核融合の安全性につきまして技術的な問題を少し御説明させていただきたいと思いますが、もちろん核融合反応といえども、放射線であるとか放射能であるとか、こういう点もございますので、この安全性についてはもちろんのことながら十分注意をして取り扱っていかなければならない、このように基本的には考えております。
  しかしながら、幾つかの点を申し上げたいと思いますが、第一点目は、いわゆる固有の安全性と申しますでしょうか、いわゆる核融合反応を起こさせる燃料の供給を、外から供給してやるわけでありますけれども、その供給を停止すれば速やかに核融合反応が停止をするという点であるとか、あるいは核融合反応そのものの性格上、制御が不可能となるようないわゆる暴走的なそういう反応というのは非常に起こりにくいと、こういう本来持っている固有の安全性というのがございます。
  それから第二点目が、先生も御指摘のトリチウムというものを燃料として使用するわけでございますが、もちろんこのトリチウムは放射線を出すわけでございますけれども、その発生する放射線というのは大変弱い放射線でございますので、したがって、遮へいというものに十分考慮さえ払えればこの放射線というものを十分防護することができる、あるいはこういったトリチウムの取り扱いについて適切な閉じ込め等の慎重な取り扱いをしていくことによって、この取り扱いについては十分安全に行うことができるであろうという見通しがございます。
  それからもう一点、核融合反応によりまして中性子というものがいわゆる核融合装置の中で発生するわけでありますけれども、この中性子によりまして回りの、例えば鉄でありますとかそういったものが放射化をされる可能性がございます。したがって、この反応によって生ずる、私ども放射化生成物と呼んでおりますけれども、こういったものが最後の放射性物質としてこの施設の中に残るわけでございますので、こういった放射性廃棄物の取り扱いについても十分注意を払う必要がある。ただし、この点については、原子力発電所であるとか再処理工場とか、こういった経験が十分生かせる、あるいはその範囲内に十分とどまるということでございますので、総じて言えば、大変慎重に扱えば安全なものであるということを申し上げていいと思いますが、具体的な施設の安全性そのものについては、今後の設計が固まることによって十分な審査をしていくということも必要であろうかと思います。
○山崎力君 その点はそれだけにいたしまして、今も出ましたが、いわゆる放射性廃棄物の問題で、高レベルというものがずっと課題になっているわけでございます。ことしの四月にフランスから高レベルの廃棄物が搬入された際、若干地元とのトラブルがありましたけれども、その際に、前任者の田中科学技術庁長官から地元の青森県知事に対して、青森県を要するに高レベル廃棄物の最終処分地にしないという旨の確約書が出された、書面が出されたというふうになっております。それは行政の連続性からいけば当然のことなんですが、具体的に後任の浦野長官にどのような形で引き継がれているか、またこれから何十年もそういった形でいくわけでございますので、どのような形で引き継いでいくかということをお知らせ願いたいと思います。
○国務大臣(浦野烋興君) 私がこうした立場に就任をいたしましたのは八月八日でございまして、前田中長官からその友引き継ぎを受けたところでございますけれども、本年の四月二十五日付の文書は、知事の了承なくして青森県を最終処分地にできないし、しないことについて、科学技術庁として責任を持って確実に対応することを明確にこれはお示ししたところでございまして、この引き継ぎにつきましては、ただいま申し上げました前大臣と私との引き継ぎ書というものがあるんですけれども、その中に明確に記載されておるところでございます。
  先月のことでございましたけれども、木村守男青森県知事さんが私のところに来られた際におきましても、私から前大臣の青森県との約束はしかと遵守してまいりますと、こうお伝えをいたしておるところでございまして、このことにつきましては、今後ともこの文書に従って確実に実施されるよう私なりの責任を持って対応してまいる所存でございます。
○山崎力君 この問題の背景には、やはり最終処分をどうするかというのが明確にできていないということがございます。そして、これまでの審議その他の中で、二〇〇〇年ごろを目途としてその処分の実施主体を設立するというふうになっておるそうでございますが、その辺への具体的なスケジュールは、もうあと五年を切ったと言ってもいいような状況ですが、どのようになっておりますでしょうか。
○政府委員(岡崎俊雄君) 先生まさに御指摘のとおり、先般の原子力長期計画の中でも二〇〇〇年を目安に実施主体を設立するということを明確に目標として定めておるわけでございます。この処分事業の実施主体の設立に当たりましては、もちろん実施主体そのもののあり方ばかりではなくて、例えば資金をどうやって確保していくか、あるいはそれに関連するいろんな法制度をどのように整備していくかという多面的な検討が必要でございます。このような観点から、平成五年の五月に、国、電気事業者並びに動燃事業団が協力をいたしまして高レベル事業推進準備会というものを設立いたしました。この準備会がこのような観点から今精力的に審議を進めておるところでございます。
  他方、本年九月、原子力委員会は、地層処分の取り組みに当たっての方策というものを明らかにいたしたわけでございますけれども、その際、特にこの処分に向けた国民の理解と納得が得られますよう、社会的、経済的側面を含め、もちろん技術的な点も含めて幅広い検討を進めながら、国民的な御理解をいただくような懇談会の設置を決めたところでございます。
  したがいまして、私どもの検討、さらに先ほども申し上げました高レベル事業推進準備会の検討、さらにそういったものをこの懇談会の場におきまして広く情報を公開しながら、あるいは関係各界の御意見をいただきながら、ぜひ二〇〇〇年を目安にこの実施主体の設立等の高レベル廃棄物の処分対策に懸命に取り組んでいきたいと考えております。
○山崎力君 とかくこういったものというのは先送りしがちなものですので、順番といいますかスケジュールに従ってやっていただきたいと思います。
  続いて、先ほど楢崎委員の中にもありましたが、ATRの見直しで、私が冒頭最初に申し上げた経済性の問題が初めてと言っていいくらいに出てきた。本来、ATR炉というのは経済的にペイしない、ただし、将来の技術開発の意味も含めてということで計画が推進されていたはずなのが、電気事業連合会の方からもうギブアップですよという形で出て、それを科技庁側としては追認というかOKを出した、このように理解しております。
  その中で、経済性だけではないんだと先ほど楢崎委員へのあれがあったんですが、その点で一点確認したいんですが、電気事業連合会側からの科技庁への質問は経済性だけであったのか、それとも別の要素があったのかどうか。もし経済性だけであったとするならば、何をもって総合的判断を加えたと先ほど答弁なさったのか、お答え願えればと思います。

○政府委員(岡崎俊雄君) 御指摘のとおり、本年の七月に電気事業連合会から原子力委員会あるいは科学技術庁、通産省に対しまして新型転換炉実証炉建設計画の見直しの要望がなされたわけでございます。
  その直接的な理由は、昨年の五月ごろに地元大間町におきます漁業補償問題が解決をいたしました。その解決を受けまして、電源開発が確定をいたしましたスケジュール等に沿って建設費の見直しを懸命に行ったわけでございます。その結果がこの三月にでき上がり、それを電源開発から電気事業連合会に説明がなされたわけでございます。残念ながら、電源開発が見直しました建設費が、従来考えていた建設費よりも相当大幅に上昇するということが判明をいたしましたので、そういった観点から、電気事業連合会がこの建設計画の見直しを申し入れだというのが経緯でございます。
  それに対しまして、原子力委員会はこれを受けまして、経済性、もちろんこの実証炉の経済性のみならず将来の実用化に至る経済性の見通しが果たしてどうなのかという観点も検討いたしました。加えまして大事な点は、やはり燃料サイクル上の位置づけ、あるいは将来のリサイクル、特にプルトニウム利用についての政策に果たしてどのような影響があるのかという点についても検討をいたしました。加えて、多年にわたって研究開発を進めてまいりましたことでございますので、こういった研究開発の点からも検討いたしたわけでございます。
  これらを総合的に勘案した結果、この新型転換炉実証炉建設計画はやはり残念ながら中止せざるを得ない。ただしその代替として、改良型の軽水炉におきます全炉心にプルトニウム燃料を装荷することを目指した計画を進めることが妥当であるという結論を得たところでございます。
○山崎力君 その経過はわかりましたが、ただそうすると、当然そのATR計画自体が過去の計画ですけれども、何だったのかという問題は残ろうかと思います。
  そしてその次の問題として、今のお話の中にも出てまいりましたMOX燃料を全炉心に装荷するいわゆるABWR、これはプルトニウム利用の問題点で出てくると思うのですが、このMOX燃料を装荷するという、MOX燃料自体の原子炉の経済性というものがどうなっているのかという問題は当然出てこようかと思います。明らかにATRの場合は経済性で行き詰まった、こっちの方はどうなんだと、その辺の議論は今まで余り聞いた記憶がございません。その辺のところはどういうふうになっているのかということをお伺いしたいと思います。

○政府委員(岡崎俊雄君) 先ほど申し上げました新型転換炉実証炉計画の見直しの審議に当たりまして、原子力委員会は、先生御指摘のその代替となるABWR、改良型沸騰軽水型炉の経済性の問題につきまして検討をされたわけであります。もちろんその前提として、技術的に本当に十分可能かどうかということも当然のことながら検討されたわけでございます。
  特に経済性の点について御説明申し上げます
と、今現在計画されております改良型沸騰軽水型炉は、既に東京電力が柏崎刈羽原子力発電所の六、七号機で建設中のものがございます。したがいまして、この六、七号機の発電原価というものをベースにしながら、これに全炉心にプルトニウム燃料を装荷した場合の経済性ということについて御審議をいただいたわけでございます。もちろん、電気事業連合会からそのデータの提供等も受けながら審議をしていただいたわけでございます。
  その結果、初年度発電原価という、若干技術的な問題でございますけれども、平均発電原価が柏崎刈羽発電所の場合、キロワットアワー当たりが約十二円と想定されているわけでございますけれども、これに対してプルトニウム燃料を利用することに伴います固定費が当然のことながら少し増加をいたします。例えば、制御系ではほう酸水注入システムであるとか、あるいは逃し安全弁の設計変更を少しやるとか、こういった観点からの設備面の経済性がどうかという点について検討をされたわけでありますけれども、その結果、恐らく建設費の一割を超えるものではないという評価が得られておるわけでございます。
  加えて、燃料費が当然のことながらウラン燃料とプルトニウム燃料では異なるわけでございますけれども、この燃料費につきましても、例えば成型加工費についてはウラン燃料に比べてプルトニウム燃料というのは若干割高になるけれども、先生も御承知のとおり、原子力発電というのは発電原価に占める燃料費の割合というのは約二割と大変低うございます。したがいまして、プルトニウム燃料の経済性を見ましても、若干の割高要因はあるとしても、全体的には十分その経済性が期待し得るということが今回の評価の結論として得られたわけでございます。
○山崎力君 それと関連しまして、つい最近でございますけれども、今青森県六ケ所村で建設の進んでおります再処理工場について、事業者側が建設費が高騰しておるということで設計の見直しというようなことが報道をされておりました。
  そういった点で安全確保という点は当然のことなんでございますけれども、繰り返しになりますけれども、そうした経済性というものと、それから、こうした事業者側というのはえてして経済性というものをどうしても重視しなければいけない、それと国側が原子力行政の中でこういう方向でいきたいというところのすり合わせが多少ずれてき始めたというのが見えてきたんじゃないか。これがATRであり今回の六ケ所村の再検討ということで出てきたのではないかという問題意識を持っておりますが、今後、国としてはどのように対応されていく考えでしょうか。

○国務大臣(浦野烋興君) 六ケ所村におきます再処理工場、これは核燃料リサイクル、これを確固たるものとしていくために必要欠くべからざる施設である、我が国の原子力政策にとって重要な施設という位置づけにあるわけでございまして、先生御指摘のとおりの報道がございました。
  私どもは、現段階では、事業者において安全性の確保というもの、これを大前提としながら経済性の向上についても努力している、そういうことを承知しておりますけれども、具体的な建設費の中身あるいは設計が今後どうなっていくんだろうかということについてはまだ確定はしていないというふうに受けとめておるところでございます。
  今後の検討を今いたしておるというふうに聞いておりますけれども、どういう形になるか、現段階で定かではございませんけれども、もしもそうした設計の見直し等々というようなことになれば、当庁といたしましては、当然のことながら十分な安全が確保されるという立場からこの厳正な安全審査を行ってまいる所存でございます。
  以上でございます。
○山崎力君 時間でございますので、最後に要望という形で締めさせていただきます。
  この経済性という問題は、非常にこれからの我が国のエネルギー政策において重要な位置を占めると思います。私申し述べませんでしたけれども、プルトニウム利用がいわゆる経済性という面からいって果たしていいのかどうかという基本的な問題もあり、そこに事業者側の、いわゆる電気をつくる側からの経済性の問題もあり、その辺と国とが、どこまで援助してどこまで介入し、あるいは自主性を尊重するか、今まで余り論議されてこなかったような気がいたしますので、その点を今後の行政の中でお含みおき願い、国民に何より安心感を与える、情報をどんどん開いていくという姿勢で臨んでいただきたいと思います。
  どうもありがとうございました。

(後略)