質問「『科学技術行政への取組み姿勢』ほか

(平成8年3月1日参議院科学技術特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 平成会の山崎力でございます。所信表明を中心にこれからお尋ねしていきたいと思います。
  まず、科学技術庁の八年度、明年度予算でございますが、一般会計でおよそ五千三百億、特別会計を含めた総額でおよそ六千九百億円と、こういうふうになっておりますが、その金額でふっと気がつくのは、今、国会で、衆議院で問題になっております住専の問題で、国民の税金をお願いするという政府側からの額が六千八百五十億、大体似ているわけでございます。
  いわゆる科学技術庁の所管する全体の予算と、今、国民にその額を別にいわゆる税金という形でお願いしたいという、そういう政府の立場、政府の閣僚としての長官の御感想をまず伺いたいと思います。

○国務大臣(中川秀直君) 科学技術の二十一世紀に向かいます重要性は、先ほど来申し上げたとおりでございます。また同時に、自由主義経済の動脈でもある金融システムを、預金者保護の観点からも、また我が国の経済の安定的な発展のためにも、その金融システムを安定的に維持していくという重要性も劣らず重要なことであろうと、このように考えております。
  いま一点、今度の問題に関してこれ以上の先送りは、国際的にも、また我が国の今の経済の現状あるいは金融システムの現状から考えましても許されないもうぎりぎりのところに来ている、このように認識をいたしております。
○山崎力君 この問題は、別のところで突っ込んだ意見のやりとりが本院でも将来あると思いますが、続いて本題の科学技術行政に関してお伺いしていきたいと思います。
  昨年の科学技術基本法の成立ということで、科技庁が日本の科学技術立国というものの将来を担うべきいろいろな研究その他について取りまとめていく、調整していくということの方針が定まりました。
  本来、この法律の目指したところというのは、各省庁あるいは民間がてんでんばらばらにやっていたのでは重複その他が起こるし、あるいはエアポケットで抜けた重要な部分も出てくるだろう、そういうところを科技庁が見て、それを調整して、ないところは足していくというような観点が重要だろうと思っております。
  そういう意味でいけば、科学技術庁が本来、庁として独自にといいますか、専門としてやるべき原子力あるいは宇宙開発、海洋開発、そういった研究のほかに、ほかの省庁その他でやっている研究をどう調整していくか、あるいは穴を埋めるところをどうやっていくかということが別の課題といいますか、行政の姿勢として必要になってくると思いますが、その基本的な認識についてまずお伺いしたいと思います。

○国務大臣(中川秀直君) 山崎委員おっしゃる御指摘は私も同感でございます。
  今度おつくりいただいた基本法は、まさに我が国の全体の科学技術政策、この目指すべき方向をお示しいただいたものだと認識しておりますし、政府においても、とりあえずこの基本計画は、策定に当たっては当庁が中心になってやっておりますけれども、関係各省いろいろな形で御関与、御参画いただきながら、連携を十二分にとりながら、政府全体の基本計画を今取りまとめていこうということで作業を進めていると承知いたしております。
  そういう中で、この基本計画を策定いたしました暁には、すべての面で重複やあるいはまた御批判をいただくようなむだもない、そして効率的な施策の全面展開をしていく、その都度その都度、事前評価も中間評価も事後評価もしながら進めていくということが重要な点であろう、こう考えております。
○山崎力君 その御認識のもとに、若干具体的なこと、所信表明に出されておりました具体的なことについてお伺いしたいと思います。
  地震調査研究推進本部というものをつくって、そのもとでいわゆる地震予知等震災対策、広い意味でのそういった地震対策というものをやっていくということを述べられておりますが、御承知のとおり、この問題というのはいろいろな省庁に絡んだ問題でありますし、あるいは地震の影響というのは極めて国民生活に重大な被害をもたらすということも事実でございます。この辺のところをどういうふうにまとめてこれからやっていくのかということをお示し願えればと思います。

○政府委員(加藤康宏君) 地震に関する調査研究でございますけれども、実際に担当しているところ、例えば気象庁におきましては、地震に関する速報とか津波予報、そういうものを出す観点からの地震観測をしておりますし、国土地理院においては、全国的な測地測量の観点から地殻の変動の観測をしておりますし、地質調査所におきましては、地質とか地下構造を調査するそういう一端として活断層の調査をしておりますし、もちろん大学におきましては幅広く地震に関する学術的な研究などをされております。科学技術庁も防災研というところで基礎的な研究をしておりますし、各県にお金を出しまして活断層の調査等をしておるわけでございますが、それぞれ得意な分野での調査研究にタッチしておるわけでございます。
  先生御指摘のように、昨年の七月に地震調査研究推進本部が発足いたしまして、地震に関する調査研究について、企画調整、それから調査結果の総合的な評価、それから広報、そういうものを政府として一元的に推進するような体制をとっていただいたわけでございますが、具体的には、その推進本部の政策委員会がございまして、そこで全国的な地震調査観測計画をつくったり、あるいは各省庁の予算の要求を事前に調整したり、そういうところで企画の調整をしているわけでございます。
  また、地震の調査研究結果の評価分析につきましても、いろんな各機関の観測データを気象庁に全部集中して皆さんが使えるようにするとか、そのデータを地震調査委員会が分析しまして全国的な地震活動の評価をする、そしてそれを地元を含めいろんなところにお伝えする、そんな活動をしているわけでございます。
  そういうことによりまして、現在の本部のもとに関係機関が密接に連携をとりまして調査研究が一元的に推進されているものと考えておりますし、これからも一層努力してまいりたいと考えております。
○山崎力君 国民の期待というのは非常にその点については大きいものでございます。いろんな事件、事故が起きた場合に、行政の縦割りとかあるいは横の連絡が悪いとか、そういったことが報道されております。事実、そういった傾向も強いということがあろうかと思いますが、事ここに関して、これからハンドリングの問題だろうと思いますが、それをうまくやってできるだけ成果が国民に反映されるようにお願いしたいと思います。
  それからもう一点、細かいことですが、その絡みでいきますと、がん関連の研究ということも所信表明の中に述べられておりました。
  これもいわゆる学術の問題からいけば、もちろん、がんというのは今、我々が直面している病気の中で一番関心の強いものの一つでございます。そういった中で科技庁がここを取り上げるというところ、一般の国民からすれば、わかっている人はお医者さんというか病気の関係だから厚生省ではないだろうか、あるいは大学研究という意味からいけば文部省なのかなというところに、科学庁というものがここにがんという表現で出てくる、その辺の事情を教えていただきたいと思います。

○政府委員(加藤康宏君) 御指摘のように、死亡原因の約四分の一をがんが占めているわけでございますので、がん研究は国を挙げて取り組むべき重要な課題と認識しております。
  がんの研究というのは、発がんのメカニズム解明という非常に基礎的なところから、実際に予防・治療法の開発といった現場で行うような臨床研究まで非常に幅広い分野でございますので、関係省庁でそれぞれの役割、得意なところを分担し合って進めているというところでございます。
  ちなみに、平成六年度からがん克服新十カ年戦略というのができております。これは政府全体の戦略でございますけれども、その中で、文部省は大学におきましてがんの本態解明を中心とした基礎的な研究をやっていらっしゃいますし、厚生省は予防、診断、治療の確立を目指しました目的志向的な研究をされております。科技庁は放射線医学総合研究所で放射線を使った治療等をやっておりますので、そういう放射線、粒子線を利用した基盤的研究を中心に担当いたしまして全体として総合的に取り組んでいるところでございます。
  具体的に、科技庁といたしましては、先ほど申しました放射線医学総合研究所で、難治性がんと申しますか、非常に普通の方法では治療が難しいがんへの適用が期待されております重粒子線による治療の臨床試行、そういうものをやっておりますし、また基礎的な研究としましては、理化学研究所でがん遺伝子とかがん抑制遺伝子の探索、そんな研究もしているわけでございます。
  いずれにせよ、本件につきましても、関係省庁と連携協力しながら、先ほどの十カ年戦略のもとで一層努力していく所存でございます。
○山崎力君 いずれにしろ、これは釈迦に説法かもしれませんが、それぞれの研究がいかに連携をとっていくか、それでその成果が国民に反映されていくかということが最終目標でございます。その意味で、とかく今までその面での評判といいますか、信頼性に欠けた部分があろうかと思いますので、効率化の意味からも皆様方の御努力をお願いしたいと思います。
  続いて、今問題となっている「もんじゅ」に絡みまして、これは中間報告をもとに、その中間報告の内容に対する質疑というものはまた別の機会にあろうと思いますけれども、若干踏み込む部分もあるかもしれませんが、所信表明にあらわれた原子力行政という観点を中心にお伺いしたいと思います。
  まず、最近の話でございます。たしか二十八日だったと思いますが、NHKの報道において聞いた記憶がございますが、今回の「もんじゅ」の事故に関して、関連する三県の知事から長官あてに提言がなされた。それからその番組中で、こういったいろいろな事情をもとに大臣みずから原子力行政、政策を見直す可能性これありという発言があったやに聞いておりますが、その辺についての御事情を御説明願いたいと思います。

○国務大臣(中川秀直君) 委員御指摘の件でございますが、今週初め、NHKにおきまして「クローズアップ現代」という番組で「もんじゅ」を再び取り上げる、原因究明の科学的な実験等もなさった、そういう番組であるが、最後に大臣としての一連の経緯を踏まえた今後の方針を聞きたい、こういうお申し越してございました。お尋ねは大変たくさんございました。報道をされましたのは、御指摘のとおり、三県知事の提言を受けた政府として今後の原子力政策の進め方についてどういうふうに考えておるかというところが取り上げられて報道されたわけでございます。
  その際発言した要旨を持っておるのでございますが、その中で私は、いろいろ政府の基本的な今の立場というものを答えろ、こういうことになれば、御案内のとおり、我が国のエネルギーの現状、原子力発電に三割依存をする現状、そして西暦二〇一〇年には四割依存しなければならなくなるかもしれない、なるであろうという長期計画のもとで、他方、資源の枯渇、先ほど来御議論のとおり、ウラン燃料も四十三年、石油が四十年、天然ガスが六十年、石炭が百二十年から百四十年、こう言われておる中で責任を持ってエネルギー政策を進めていくということになりますと、正直、具体的に現実にそれにかわるエネルギーの議論を、代案を持たない限り、やはり原子力というものに依存せざるを得ない現実がある。
  加えて、原子力発電をすればプルトニウムも出てくる、使用済み燃料も出てくる、その処理処分の問題もある。また、地球環境に与える影響も極力低減していかなければならぬという中で、今の基本政策をすぐ変えてしまうという結論は現段階ではかわる案を求めない限りできません、その基本は、現段階で政府の見解をと言えば、今までの基本政策を堅持していくことしかない、こうお答えするしかありませんと。
  しかし、他方、いろいろな国民的なコンセンサスを得ていかなければこの基本政策を遂行していくことにもさまざまな問題を生じ、また基本政策の遂行自身もいろいろな面で制約を受けてくることになる。その意味で、今起きている国内のさまざまな御議論を、消費地だとか発電立地県だとかというそんな区分けではなくて、地元民の皆さん方だけに御理解をいただくなんというそんなレベルではなくて、本当に国民一人一人が真剣にさまざまなそういう問題を我が問題として考える、そういう作業をもっともっとやっていかないといけない。
  三県知事の御提言はまさにその点で、コンセンサスをつくるためにもつと国自身が積極的な対応をしてくれ、そうでなければ立地県は地元の県民感情も含めて今までのようなことでは済みませんよという、まことに行政を預かるお立場での危惧の念あるいは大変な御苦労というものを申された提言であったと、このように受けとめまして、具体的には今検討中で詳細には申し上げられる段階にございませんけれども、原子力委員会あるいは安全委員会等々を中心に、原子力政策に批判的な立場の方々も含め、また原子力発電所が一基もない、しかし一番電気を、エネルギーを使っている大都市の方々も含め、幅広い多くの方々に御参加をいただく、そういう議論の場を、仕組みを、意見をただ伺うというだけではなくてそういう場をぜひつくってまいりたい。そういう中で政策に反映すべきものがあったら、これは柔軟に検討して反映させてまいりたい、こういうことを申し上げた次第でございます。
  最後のお尋ねの中で、ということは原子力政策の進め方を転換するのか、こういうお尋ねですから、繰り返して、国民の合意、必要性に対する理解、納得、安心、これを基本にして進めなければ政策の進め方もいかぬだろう、その意味で進め方は転換しなければいけない、そういう意味ならば変えていかなければいけないと思う、こう申し上げた次第でございます。
○山崎力君 そういった点での真意ということを伺ったのを踏まえまして、所信表明に、「安全の確保が大前提であり、厳格な安全規制を実施する」、こういうことが述べられているわけでございます。これは先ほど言ったこととちょっと矛盾するかもしれませんが、中間報告を詳しくということからいけば、そこまで今の時点で踏み込むかどうか別といたしまして、先ほど海老原委員の方からの質問にもそれに近い部分がございましたので、今回の事故についての私自身の認識というものを御披露申し上げまして、それに対する科技庁側の考え方といいますか、対応をお聞かせ願いたいと思います。
  私は、この事故というものは非常に大きな問題を含んでいると思います。これは大体わかってきた、温度計のさやが折れた、こういうことですが、詳しい調査というものは、これは中間報告全体の精査の中の委員会で述べることだと思いますけれども、現状あらわれてきた段階において何が問題かというと、そのさやがなぜ折れたか、その折れた原因がいわゆる流体力学で起きる渦によっての金属疲労であろう、こういう報告になっているわけでございます。
  そうすると、まず第一に考えるのは、どういう基準で設計をしたのか。頭の中にそのナトリウムの流体に対する応力のカルマン渦というんですか、そういった渦の力関係というものが頭に入っていなかったのか。その次に言えば、入っていたとして、どういう計算で強度計算をしたんだ。あるいは本来の感覚でいけば、実物での試験をやったのか、あるいはそこまでいかなくてもコンピューター解析をやったのか。そういったことが一つ一つこの問題の一連の考え方として出てきてしまうわけでございます。
  これについてまだ詳しい報告はございません。しかし、どうも今の時点では、先ほどの御答弁にもありましたように、その辺の認識が甘かったようだという御答弁。ということになりますと、これは一本の温度計の問題ではなくて、それを敷衍すればシステム全体への信頼性の問題へつながるということでございます。ここのところを計算ミスしたから、あるいは製造で設計図どおりできなかったからで、これは全体には行きませんということになったとしても、それではそのチェック体制はどうだったんだという問題が必ず出てきます。そして、行政的に最終的な責任を持つ科技庁としては、その辺のところの信頼関係、あるいはどこまで科技庁が入ってそれをチェックする必要があるのかという問題も入ってまいります。
  そういった点からいきますと、私はこの問題、ナトリウム炉だけの問題だろうとは思うんですが、そうすると、今まで営々と築いてきた軽水炉の発電技術そのものに対してもチェック体制の不備というものが同時並行にあらわれてくれば、まさに我が国の原子力行政、原子力計画の根幹を揺るがす大問題になりかねない。あるいはそこのところを信用できない人たちが残れば、最初に出てきた「安全の確保が大前提であり、厳格な安全規制を実施する」というところに対する国民の信頼感をどう再構築するかという問題まで行きかねないというふうに認識しております。その点についての科技庁側の御見解を伺いたいと思います。

○政府委員(宮林正恭君) 原子力の安全確保といいますのは、原子力開発におきましてはまさに大前提でございまして、国民の皆様、特に地元の方々との信頼関係もこれまた不可欠である、こういうふうに認識しております。しかしながら、今回「もんじゅ」の事故では、地元の方々や国民の皆さんに大変な不安感なり不信感を与える結果となりまして、極めて重要な事件だと、こういうふうに私どもは認識しておるところでございます。
  特に、先生御指摘のありましたポイントにつきましては、私どもが二月九日に取りまとめをいたしました調査の状況に関する資料の中でも、高い信頼性を確保することとしていたにもかかわらず、現実にナトリウム漏えい事故を発生するに至った、こういう事実については非常に私ども重要なことだというふうに認識しているところでございます。
  現実のこのさや管といいますか温度計につきましては、残念ながら、科学技術庁なりで安全審査をする、あるいは設計、工事方法で見るということにこれまではなっておりませんでした。したがいまして、私ども非常にゆゆしきことが起こったという認識をしておりまして、これにつきましては私どもも引き続き検討を進めているところでございますが、やはりこういうことが二度と起こらないような方向で対応する必要がある、こういうふうに考えて、そういう方向で進めていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
○山崎力君 そちらの方向でやっていただくということは当然のことといたしまして、私どもとしては、厳密な意味での調査報告書といいますか、そういったものをできるだけ一般の国民にわかりやすい形で出していただきたい。それは、専門的な強度計算の方式であるとかそういったものは専門家に任せるとして、少なくとも今回の事故が科技庁にとっても、専門家に任せていて大丈夫なものがだめだったという事例だと私は思っているわけです。
  この専門家というのが設計者なのかメーカーなのか、あるいは動燃まで入るのか、あるいは原子力安全委員会その他の調査機関まで入るのか、その辺は皆様方の御専門で、その組織的な中でどういうふうに安全をチェックするかということはお仕事としてお任せするといたしまして、少なくとも今まで科技庁が思い描いていた安全管理の方法では国民の負託にこたえるような安全性は確保できなかったという現実があるわけでございますから、その辺のところは、その結果対応というものをわかりやすい形でしていただきたいということをまずお願いしたいと思います。
  次いで、先ほども申し上げましたように、一温度計の問題にこれはとどまりません。温度計がそうであるならば、ほかのものはどうなんだ。例えば、もっと近い時点で言えば、一次系の温度計はどうなっているんだという話がすぐ思い浮かぶわけでございます。あるいは配管自体の強度はどうなんだ、どういう計算をしていたんだ。そこのところは今までここの時点で専門家に任せたからいいんだというふうなことでは、私は今回のことからいけば、もちろん今回のことは例外的だと思いますけれども、一つのことがあれば二つ三つのことがあり得るという前提に立てば、このことは揺るがせにできない問題だと思います。そのことをぜひ強くお願いしたいと思います。
  その意味におきまして、調査報告書というものがございますが、これは科技庁の問題ではないかもしれませんが、先ほどの海老原委員の質問の中にもありましたように、犠牲者を出した、そのところの人間系の問題、それを含めたその辺のところもぜひ調査の重要な項目として、反省材料として、実のところ、非常に言いにくい話ですが、身内の恥をさらすというようなところもあろうかと思いますけれども、やはりここまで至ってくれば国民の理解を得るためにはその辺のところも含めた調査報告書の作成をお願いしたいということを要望しておきたいと思います。
  続きまして、先ほどもありましたけれども、いわゆる最終処分、バックエンドの対策について積極的に取り組む、こうなっているんですが、これは申しわけない言い方ですが、いわゆる役所の決まり文句ではないかというような気がいたします。
  というのは、この問題は関係者にとってはもう十年以上も前から極めて深刻な問題としていろいろやってこられて、御努力されてきたというのはわかっているんですが、目に見えた形での成果があらわれていないというのが現状だろうと思っております。見通しがなかなか立ちにくい。その中で積極的に取り組むと言われても、これは何の意味だというふうに意地悪く言えばとってしまうことになるんですが、その辺のところを御説明願えればと思います。

○政府委員(岡崎俊雄君) 先ほども御答弁申し上げましたとおり、高レベル廃棄物の処分というのは原子力発電体系を確立していく上で避けて通れないし、大変重要な課題だということを申し上げました。具体的に今、研究開発並びにその処分体系の確立ということに向けて取り組んでおるわけでございます。
  昨年九月に原子力委員会において、これに向けての取り組みについての基本的な方向についても明らかにいたしました。その一つに、これからの研究開発を中心とします技術的な事項につきます専門部会は既に昨年九月に設置をいたしました。現在、鋭意検討を進めておる段階でございまして、この成果をもとに、できますれば二〇〇〇年ぐらいには第二次の全体的な研究開発成果を取りまとめて、技術的な今後の処分に向けての見通しというものを明らかにできるように、研究開発の項目でありますとか、あるいは評価のあり方でありますとか、そういった点について現在鋭意検討を進めておりまして、できますればその専門部会の報告をまとめていきたいと思っておるわけでございます。
  もう一点の技術的な問題以外の今後の処分の実施主体の設立てありますとか、あるいはこれを取り巻きます例えば法整備でありますとか、あるいは社会的な合意を得る手段でありますとか、こういった社会的、経済的側面を幅広く御議論いただきます懇談会を設置するということを決めたわけでありますけれども、残念ながらこれはまだ設置に至っておりません。現在、幅広くこれに参加をいただく先生方の人選でありますとかあるいは進め方について検討を進めておる段階でございまして、できる限り早く国民各界あるいは各層から英知を集めていただくよう、この懇談会の設置を早急に図っていきたいと思っております。
  したがいまして、こういう作業を進めまして処分にかかわります研究を加速するとともに、二〇〇〇年ごろには処分の実施主体を設立する、こういう目標に向けて具体的な取り組みを図っていきたいと思っているところでございます。
○山崎力君 それでは続いて、若干絡む問題ですが、世界的な核の不拡散体制の充実強化というものに積極的に貢献すると所信で述べられております。これは具体的に何をイメージなさっているのか、いろいろなことがありますので、その辺をちょっと一歩踏み込んだ表現で御説明願えればと思います。
○政府委員(岡崎俊雄君) 大臣の所信の中にも先生御指摘の不拡散体制の充実強化に取り組むということを述べておられるわけでありますけれども、もちろん原子力の開発利用を進めるに当たりましては、厳に平和目的に限るとともに核不拡散との両立を図るということは、大変重要なまさに基本であろうかと思っております。
  そういう観点から、我が国は、いわゆる平和利用を進めておる原子力の先進国として、これまでも核不拡散に関する条約NPTに基づく義務、こういうものを厳格に果たしてきたわけでございますし、それに加えまして国際的な核不拡散体制の充実強化に貢献してきたわけでございます。
  今後、さらに具体的に、例えばNPTに基づく国際原子力機関IAEAによります保障措置の強化あるいは効率化ということを図っていかなくてはなりません。こういった検討に我が国が率先して今も参加をいたしております、専門家の会合等についても積極的に参加をいたしておりますけれども、こういったIAEAの保障措置強化にぜひ貢献をしていきたいというのが第一点。
  それから、旧ソ連におきますいろんな問題がございます。こういった問題につきましては、非核化支援でありますとか、あるいは旧ソ連におきます核兵器関連技術者の流出防止という観点からも今取り組んでおるところでございます。
  さらに、今後、原子力の開発利用が開発途上国にも広がっていくということが十分予想されるわけでございます。こういった国におきます保障措置関連あるいは核不拡散関連の人材養成、こういった問題についてもIAEAと十分連携をとりながらぜひ積極的に我が国が貢献をしてまいりたい、こう考えております。
○山崎力君 最後の全体の取りまとめのことでぜひ長官から御所見を賜りたいと思うのですが、この所信表明の一番最初にもありましたように、科学技術振興というのは未来への先行投資であるというふうにうたっておられます。まさにそのとおりの面はございます。ただし、投資というからには、これは金額とそのタイミングというものが極めて重要な問題ではなかろうかと思っております。
  まさにその点において、今の原子力行政というものが先行投資であることは皆、心の中では認めつつも、今のタイミングで今のこれだけの予算をつけることが果たしていいのかどうかという議論というものはなかなか出てきていない。残念ながら、科学技術に関することだけに、一般の人たち、私たちも含めて多くの人たちが将来的にはこうなってくれればなというふうに思ったとしても、今この時点でこの技術にこれだけのお金を投資することがいいのかどうかという踏み込んだ議論になると、なかなかそこまで行けないというのが実情ではないかと思うわけです。
  長官御自身、申しわけない言い方でございますけれども、そういった中でのことからいけば私たちとそれほど違わない知識ではないかというふうに申させていただきたいと思うのですけれども、そういった同じような立場から、専門家がこれだけのことをやりたい、これが将来の日本あるいは世界の科学技術の進展のために必要だというふうな要望をいかに現実のもの、政治の場のものとして予算化し、あるいは方向づけるかということの責任というものが今、長官のお立場にかかっているというふうに認識するわけでございます。
  そうすると、私たちは、これから未来へ向かって余裕のある分を要するに先行投資していればいいんだという時代ではなくて、先ほども申し上げましたように、ある程度の経済効率というものも重要視しなければならなくなった時点で、どういうふうな観点で国民は国の科学技術行政というものを見ればいいのか、あるいはその責任者としてのお立場から、そういった視点で国民に、私どもはこういうふうな形で今こういうものをこれだけの予算をつけてやっているのだということを長官のお立場で御説明願えればと思っておりますが、.よろしくお願いいたします。

○国務大臣(中川秀直君) 極めて核心に触れる重要な御指摘であろうと存じます。
  科学技術の施策の実施というものに対しても国民の理解、共鳴、共感、支持がなければ、これはもう先ほどの若者の科学技術離れもそうでございますけれども、御協力は得られないと思いますし、本当の力が出てこない、このように思います。その理解を得るために、原子力にしても、宇宙開発にいたしましても、海洋開発にいたしましても、その他さまざまな研究分野におきましても、一層の努力をやはり払っていかなければいけない。
  先般の当院の御決議にもございましたATR転換炉の実証炉建設の断念について、決算の面で厳しい御指摘もいただいております。私はやっぱり、一般論ではございますけれども、そういう事前の評価あるいは中間的な評価、事後の評価、こういうものを、行政は行政、また立法は立法、さまざまな場面できちんと本当に透明性、あるいはまた幅広い国民の御参加もいただいたガラス張りの中で御議論をいただいていくということが極めて重要だろうと思います。
  もちろん、科学者、研究者の立場からする技術的な側面というものもあると思います。原子力等の場合は、五年や十年で急に方針を変えるなどということではとても間に合いません。高速増殖炉にいたしましても、十七年の長きにわたる常陽での実験があり、そして今度の「もんじゅ」になってきておること。それから、これからの核融合にいたしましても、本当にいっかを明確に見通すことさえも現段階でできるかというと、正直申し上げにくいのでございます。
  そういった技術的な側面や、今、予見し得る範囲内での議論という制約もいろいろあるだろうと思います。しかし、そういう議論も大いに本当に国民レベルでやる、その努力が本当にすべての面で求められている、このように考えておりますし、またそういう認識を持っていろいろなことを考えるときに常に臨んでまいりたい、こういうふうに考えております。
○山崎力君 まず、そういった意味での御答弁の趣旨を具体的な行政の中で私たちに示していただきたいという御要望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  いろいろありがとうございました。

(後略)