質問「『なぜ津軽海峡は領海3海里なのか』他

(平成8年6月4日参議院海洋法条約等に関する特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 平成会の山崎でございます。
  今も出ておりましたが、海洋汚染に関するというところで核原料物質、核燃料物質及び云々という法律の一部を改正する、そういった中での問題から御質問させていただきたいと思います。
  便宜的に大づかみにしまして、この問題というのは、放射性物質の海洋投棄に関してどういうふうに取り締まっていくかということだろうと思うんですが、これは本来的に言えば油であるとかその他の物質であるとかと同様でございますけれども、事が放射性物質であるということで特段の専門知識も必要であろうということで科技庁の担当になっているかと思うんです。
  この放射性物質の海洋投棄についてどういうふうにこれから日本は対処していくのかという、まず大枠のところを長官からお伺いしたいと思うんです。

○国務大臣(中川秀直君) 御指摘の放射性物質の海洋投棄につきましては、いわゆるロンドン条約により国際的に禁止をされておるわけでございます。これを各国が忠実に遵守していくことがまず何よりも重要であるわけでございます。
  科学技術庁としましても、そういう観点からも放射性物質の管理を含めた原子力安全分野における各国との情報、意見交換等をさらに充実してまいりまして、投棄の未然防止を図っていくというのがまず第一のスタンスでございます。
  また、実際に海洋投棄が行われたと仮定した場合、その違反の取り締まりに関しては、国連海洋法条約により我が国の管轄権が今般排他的経済水域等まで拡大をすることも踏まえまして、原子炉等規制法及び放射線障害防止法の履行を確保するために、今回の法改正において科学技術庁による立入検査及び報告徴収の規定を整備するということにした次第でございます。
  具体的ないろいろなことについては海上保安庁との間で緊密な連携を図っていかなければなりません。それについてはまた政府委員から御答弁申し上げますが、基本的スタンスは以上申し上げたようなことで放射性物質の海洋投棄の取り締まりに万全を尽くしてまいりたい、こう考えております。
○山崎力君 基本的な方針というのはそれで十分だと思うんですけれども、それではいざ具体的になると、どうするかという問題が出てこようかと思うんです。
  専門知識といいますか、観測機材も含めて今科技庁にそれに対応する機材はないと考えてよろしいかと思います。私の知るところでは、これと似た形で、科技庁予算で建造した放射能の調査艇というのでしょうか、三隻ばかりございまして、それが今海上保安庁で運用されておる。対象は横須賀、佐世保、沖縄、具体的に言えばアメリカの原子力艦艇の出入港の際に放射線異常がないかどうかを観測するということだろうと思うんです。
  ただ、この三隻のやっている水域というのは極めて限定的なところでございまして、先ほどの答弁では、今度の条約によって海上保安庁の管轄といいますか、そういったところが七分の一ふえるということをおっしゃっていましたが、このことに関しては七分の一どころではない、もう何百倍も何千倍も水域はふえるわけでございます。それでは具体的にどういうふうな形でこの監視、取り締まりをしていくのかという点について御答弁願いたいと思います。

○政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。
  放射性物質の海洋投棄の取り締まりにつきましては、海上保安庁と緊密な協力をしながら進めていかなきゃいけないところでございます。したがいまして、これにつきましては具体的な提携のあり方等々につきまして検討、調整を今両庁で進めさせていただいております。
  現段階においては、大体以下のような進め方を考えているところでございます。
  まず、放射性物質の海洋投棄の事実を発見する契機でございますが、こういうものにつきましては、海上保安庁の巡視船艇などが洋上において放射性物質と思われるものを投棄している船舶を発見する場合、放射性物質の海洋投棄の疑いに関する情報が、いろいろな方法はあると思いますが、当庁に入ってくる場合等が考えられるわけでございます。こうした場合には、当然直ちに当庁と海上保安庁との間で相互通報が行われて次のステップに移っていく、こういうことになります。例えば、海上保安庁の巡視船艇などが違反の疑いのある船舶を発見したような場合には、当庁が当該船舶に対する立入検査あるいは船舶の船長等からの報告聴収ということに着手するというふうになると思っております。
  具体的な立入検査をやりますときには、これは基本的には洋上で行われることになります。それで、私どもの方はそういうふうな船舶あるいは航空機というようなものを所有しておりませんものですから、これらの要員あるいは資機材の現場への輸送ということにつきましては、海上保安庁の協力を得まして巡視船艇あるいは航空機などを活用して行うというふうなことを考えております。
  それから、要員及び資機材の確保でございますが、これにつきましては科学技術庁の方も当然考えていかなきゃいけない、こういうふうに思っておりますけれども、やはりかなり専門的知識を要求する部分もございます。こういう部分については、日本原子力研究所あるいは放射線医学総合研究所といったようなものを中心といたしましたいろいろな関係の機関に協力を求めるということも必要ではないか、こういうように思っておりまして、そういうラインで今考えているところでございます。
  それから、現場に到着いたしました後、当庁の立入検査官は船舶の関係者から質問あるいは書類等の検査、資料の収集、分析等を通じまして放射性物質の投棄の有無を確認する、あるいはそういうふうな物質の特定といったような調査のための作業をいろいろ進めるわけでございます。その結果を海上保安官に提供いたしまして海上保安庁の捜査に協力し、このような調査、捜査によりまして外国船舶に違反があるという事実が認められる場合には、担保金制度適用等適切な措置をとっていくというふうになるというふうに考えております。
○山崎力君 いずれにしましても、そうなってきますと、一義的にといいますか、まず触角といいますか、実働の部分は科技庁さんというよりは海上保安庁さんの方の仕事がふえるといいますか、責任が重いといいますか、そういう状況になろうかと思うんですが、現体制で海上保安庁の船艇、航空機、そういったものにある程度の観測機材とある程度の教育を受けた人を載せるということで対応できるのでございましょうか。これに対しての対応策を海上保安庁としてはどのようにお考えでございましょうか。
○政府委員(秦野裕君) 私どもの任務は、大ざっぱに申し上げますと、ただいま科学技術庁さんの方からもお話ございましたように、まずそういう違反の疑いのある船舶があるかどうかということを把握するということが一つ。それから二番目には、もしそういう疑いのある船舶がありました場合に、科学技術庁さんの専門的知識を持っておられる方を、あるいは資機材を現場へ輸送するということが二つ目。そして、さらにそれで違反行為が明らかになった場合に捜査に着手するということが三番目。大きく言えばその三つになろうかと思います。
  したがいまして、特に最初の点、違反した疑いのある船舶を把握できるかどうかという点でございますが、これにはいろんな情報がどうしてもやはり必要でございますので、これは科学技術庁さんの方と十分連携をとりながら情報把握に努めていきます。また先ほど来、これは海上保安庁業務全般として御説明しておりますとおり、私どもの船艇、航空機の充実強化、あるいは効率的な運用ということを図りまして、現在でもいわゆる広域的な哨戒体制というものは実施しておるわけでございますけれども、それをさらに充実強化に努めることによりまして、そうした点の発見に極力努めていきたいというふうに考えております。
○山崎力君 この点について、ある意味においては哨戒活動をしております自衛隊との協力ということも考えなければいけないと思いますし、まず見つけるということが第一のスタートでございます。その辺のところの体制を十分とっていただきたいと思います。
  もう一つこの問題の特殊な点は、こういう放射性物質を違法投棄する、海洋投棄するといった場合、大まかに言って二つのケースしかないということでございます。一つは、不要になったものを処理に困って捨てるということが一つ。もう一つは、現実に今原子力で動いている船、これは一部の船を除きましてほとんどが軍艦でございます。我が国もかつて「むつ」というのがありましたけれども、これは廃船になりましたし、商船というのはもうほとんどゼロに等しい。それも軍艦のうちほとんどが潜水艦であるという状況がございます。
  そして、非常に不幸なことですけれども、かつてソビエト、当時のソビエトのエコーU型という原子力潜水艦が事故を起こしまして、日本の領海に入ったとか入らないとか、そのとき放射能が漏れていたとか漏れていなかったとかということもございました。そういういわゆる外国公船に対してそういった容疑といいますか問題が出てきたときに、どういう対処が可能なのでございましょうか。

○政府委員(谷内正太郎君) まず、海洋法条約上の規定ぶりについて最初に御説明をさせていただきたいと思います。
  国連海洋法条約は、海洋環境の保護及び保全に関する同条約の規定については、軍艦それから非商業的役務にのみ使用される政府船舶等には適用がない旨規定しておるわけでございます。これは第二百三十六条でございます。したがって、沿岸国の関連国内法令もその排他的経済水域、接続水域及び領海を航行しているこれらの船舶には適用されないということになっておるわけです。ただし、領海におきましてその公船が故意のかつ重大な汚染行為を行う場合には、一般に領海外への退去要求等の必要な措置をとることができる、こういうことでございます。
  また、この条約上、軍艦及び政府船舶を所有しまたは運航する国はこれらの船舶が合理的かつ実行可能である限り本条約に即して行動することを確保する義務を負っておるわけでございまして、これは二百三十六条のただし書きに書いてあるわけでございます。
  これらの船舶が他国の排他的経済水域、接続水域または領海において本条約に反して海洋汚染行為をした場合には、沿岸国は必要に応じ、これらの船舶の旗国に対し、かかる義務に対し適切な措置をとるよう外交ルートを通じて要請することができるということでございます。さらに、もしこの条約上の義務違反ということが明白になってきた場合には、かかる義務違反の責任を旗国に対して国際法上追及することが可能でございます。
  以上、海洋法条約上の整備でございます。
○山崎力君 そこで若干違ってきているのは、領海部分の扱いと接続水域、経済水域の違いがこの問題では出てきているんではないかと思うんです。
  今回の条約に関しまして、我が国は五つの海峡と承知しておりますけれども、今まで十二海里の主張できる領海を三海里にとどめているというような形のことを伺っておるわけですが、今回の条約締結に当たって、津軽、対馬、宗谷等の海峡について十二海里をとるのか三海里をそのままとるのか、どちらでございましょうか。

○国務大臣(池田行彦君) ただいま委員御指摘のいわゆる五海峡でございますが、これにつきましては今回新たに直線基線を採用することに伴う変更は若干ございますけれども、その点を除きましては基本的に現状を維持する、すなわち三海里でまいると、こういうことでございます。
○山崎力君 その理由はいかなる理由をもってそのままということなんでございましょうか。
○国務大臣(池田行彦君) きょうの御審議でもいろいろ申し上げましたけれども、我が国は世界の中でも主要な海洋国でございます。海洋国であるという立場から申しますと、諸国が重要な海峡における自由な通航を維持する、こういう政策をとることは我が国の総合的な海洋に関する利害から申して適切であると考えるわけでございます。
  そういったことで、五海峡につきましても、そういった諸国の自由通航を維持するという政策を促進するという観点から従来の方針を維持したというのが基本でございます。
○山崎力君 それでは、この基本になっております、昭和五十二年と承知していますが、領海法には三海里の規定はどのように記載されておるのでございましょうか。
○政府委員(西田芳弘君) 五海峡の部分におきますところの現行領海法における規定でございますけれども、領海法の附則二項でございますが、このような規定がございます。
  「当分の間、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道及び大隅海峡については、第一条の規定は適用せず、」、つまり第一条におきまして領海の幅員につきましては十二海里という定めがあるわけでございますけれども、「第一条の規定は適用せず、特定海域に係る領海は、それぞれ、基線からその外側三海里の線及びこれと接続して引かれる線までの海域とする。」というふうにされております。
○山崎力君 今回の国内法の改正で、その条文における「当分の間」というものを削除しなかった理由はどういうことでございましょうか。
○政府委員(西田芳弘君) 先ほど外務大臣から答弁がございましたとおり、海洋国家たる我が国として諸外国が重要な海峡における重要な通航を維持する政策をとることを促進すべく、我が国といたしましても五海峡につきましては現状を基本的に変更しないことが適当だというふうに考えた次第でございます。
○山崎力君 現状を変更しないということは、当分の間それでいきますよという現状を変更しないというふうな御答弁だと思うんですが、こういういわゆる海の国連憲章と言われる海洋法条約を締結して、それに伴う領海をいかに決めるかといったときに「当分の間」というのがあることは、三海里にするか十二海里にするかは国策としての判断としても、その条文をそのまま残すということはいかがなものかというふうに私は感じるんですが、その辺についてのお考えはいかがなものでしょうか。
○国務大臣(池田行彦君) ただいまの点でございますが、委員御承知のとおり、今回の国連海洋法条約の規定の中には通過通航制度というものもあるわけでございます。この通過通航制度によりまして自由な通航の確保ができるんじゃないかと、こういう見方もあるわけでございます。しかしながら、実は現在までのところ、通過通航制度がいかなる場合に適用されるかについて十分な先例といいましょうか国家実行の集積がございません。
  そういう事情でございますので、自由な通航を確保するためには従来の方針を維持することが適切であると。少なくとも当分の間はということで「当分の間」を残したということでございます。
○山崎力君 このことはちょっと後でまた戻るかもしれませんが、それに関連して、私の地元である青森県と北海道の間を通っている青函トンネルがございます。その間の一部が前の領海法によって公海部分になっておりまして、当然その下が日本国内には入っていないという極めて特殊な事例がございます。
  その点について、これは自治省さんの担当なんでしょうか、その公海部分のトンネルに対する固定資産税についてはどのようになっておりますでしょうか。

○説明員(片山善博君) 固定資産税は固定資産所在の市町村におきまして課税することとされております。今お話のありました青函トンネルにつきましては公海の下の部分にございます。これにつきましては、昭和六十三年二月十六日の閣議決定によりまして北海道松前郡福島町それから青森県東津軽郡三厩村にそれぞれ編入されております。
  このようなことから、青函トンネルの公海の下の部分につきましても固定資産の課税対象となっております。
○山崎力君 閣議決定をすれば公海下の公の土地、国際的にも公の土地のところでも課税になるというふうに日本の法制度はなっていると考えてよろしいんでしょうか。
○説明員(片山善博君) 当時の閣議決定をした理由でありますけれども、これにつきましては、例えば沿岸国が領域を越えて公海の海底までトンネルを掘削した場合に、沿岸国はトンネルの公海の海底の地下まで延びた部分におきましても領土と同様の管轄権を行使できると解されていると。それから、青函トンネルの公海の下の部分につきまして管轄権を行使するとした場合に、警察の事案でありますとか消防の事案でありますとか、それから例外的に管轄の裁判所を定める、そういう必要がございますので、このような理由によりまして青函トンネルの公海の下の部分を市町村の区域に編入した、それによって固定資産税の課税権も発生すると、こういうことでございます。
○山崎力君 その点は結構でございます。ただ、そういった点というのはなかなか一般の国民にわかりづらい。どうなっているのかなということ、特に法的な背景はどうなっているのかなということがございます。
  今の最初の問題に戻りますと、それでは何ゆえに三海里なのかということが今の御説明では、ああ、そんなものかなということかもしれませんけれども、それではなぜ十二海里にしちやまずいのかなということに関しての疑問には余りお答えになっていらっしゃらないような感じがしますので、もう少しこの問題を詰めさせていただきたいと思うんです。
  いわゆる外国の海峡でございますね、いろいろ重要な海峡がございます。私どもがよく知っているところでは、マラッカ海峡があり、あるいは世界的にみればドーバーがありジブラルタルがあり、あるいは石油の問題でいえばホルムズ海峡があります。そういったところではどういうふうな措置が現在とられており、また今度の海洋法条約によって変更があったのかなかったのか。その辺はどのようになっておりますでしょうか。

○政府委員(谷内正太郎君) 世界の主要海峡におきまして領海幅を三海里にとどめているものといたしましては、これは我が国の海峡の一つでございますけれども、対馬海峡の西水道におきまして韓国と我が国が同様の措置をとっているという例はございます。ただいま先生が御指摘なさったようなマラッカ海峡やボスポラス、ダーダネルス海峡等につきましては、これはいずれも通過通航制度を認めておるわけでございます。
  なお、領海幅を十二海里としていない海峡の例といたしましては、ドイツーデンマーク間の海峡、それからスウェーデンーデンマーク間の海峡、あるいはまたフィンランド湾が挙げられます。
○山崎力君 そうすると、これはまさに国の方針としていわゆる自由通航、無害通航、そういったものの制度でいくのか、それとも領海を残すのかという問題になると思うんです。
  先ほどの大臣の御答弁では、海洋国家として自由航行をなるべく認めていきたいというお考えのための政策というふうにおっしゃられておるわけでございます。それではほかの海洋国家と称するところは余りその辺のところを配慮していないというふうにも受けとめてよろしいような御答弁ではなかったかと思うんですが、いわゆる領海にしないでやるのと、それから領海と認めておいて自由通航、先ほども無害通航について今度の条約でいろいろ具体的に示していると言っておりましたけれども、その辺の政策の違いというものはどの辺から出てきたと解釈すればよろしいのでございましょうか。

○政府委員(谷内正太郎君) 私どもとしては、先ほど大臣からも申し上げましたように、なるべく諸外国が重要な海峡において自由な通航を維持するということと、それからまたこの通過通航制度については、各国がとっている制度が言ってみればより共通のものができている、そういった制度に合わせたいという面と両方あるわけでございます。それで、先ほどから先生が御指摘になっておりますような、国際航行が頻繁に行われておりますところと、それから日本の津軽海峡その他、こちらとは歴史的な、あるいはまた国際的な航行のメリットというものも相当違うわけでございます。
  したがいまして、主要な海峡が通過通航制度をとっているから、各国の国家実行も積み重なっているから、したがって我が国についても直ちにそれを適用すべきというふうには私どもは考えておりませんで、これは我が国の先ほど来の海洋の通航の自由その他の点から考えて、総合的に判断させていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
○山崎力君 ちょっと細かい点に入るかもしれませんが、先ほどはいわゆる朝鮮半島と対馬との間の海峡、そこのところは韓国側も三海里にしておりますよということを言っておられましたが、宗谷海峡についてはどうなんでしょうか。ロシア側は領海は十二海里を今現在やっておるのでございましょうか。
○政府委員(谷内正太郎君) 宗谷海峡につきましては、ロシア側からはかりまして日本との中間線までを領海にしておるわけでございます。他方、御指摘のように日本側は日本の沿岸から三海里という形で、そういう意味では公海部分がそこに残っているという形になっております。
○山崎力君 ということは、同じ海峡というものから考えますと、なぜか日本側が遠慮しているというふうな設定としか思えないことがその事実からは伺えるわけでございます。特に、外国との間の国際海峡において、一方が十二海里の領海を持って一方が三海里の領海を持つということは、これはやはり国民にはなかなか納得できないのではないかというのが私の正直な感想なんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
○政府委員(谷内正太郎君) 先生の御指摘もごもっともな点があると存じます。他方、国際的に見ますと、ドイツとデンマークの間の海峡でございますけれども、ドイツは領海幅を原則十二海里としておりますけれども、ドイツ−デンマーク間の海峡においては両国間の中間線から一・五海里手前の線までにとどめておるわけでございます。デンマークは現在のままで領海幅は三海里の原則を維持しているということがございます。ドイツは中間線まで、ロシアのようにはやっておりませんけれども、一・五海里というものを残して、他方デンマークは三海里にして中間部分を残していると、こういう例もございますので、一概に日本とロシアとの間の関係が日本にとって不平等であるということは言えないのかなというふうに思います。
○山崎力君 その点とはまた別に、津軽海峡、それから対馬海峡のうちの対馬−壱岐間の海峡及び大隅海峡というのは、これは両岸とも日本国内の海峡でございます。そういったところまで、国際間のところの海峡はともかくとして、日本国内の海峡まで領海を三海里にするというのはまた別の考え方といいますか、方針がなければいけないと思うんですが、その辺については何かお考えがあってのことなんでしょうか。
○政府委員(谷内正太郎君) 海洋法条約では、我が国のような、今御指摘のような海峡幅を残しているところは、航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海または排他的経済水域の航路を残すという、これにのっとったものでございます。
  私どもといたしましては、この五海峡についてそれぞれの海岸線の状況とか、地形上の状況とかを総合的に勘案したわけでございますけれども、それぞれの海峡について別々の公海の航路帯を設ける必然性は必ずしもないように思いまして、結論といたしましては、当分の間同様の措置をその五海峡についてとるようにしようと、こういうふうに考えたわけでございます。
○山崎力君 ちょっと観点を変えさせていただきますが、先ほどの無害航行権の中で一番問題になるといいますか、今の世界情勢の中で意味を持つこととして潜水艦の問題がございます。潜水艦がそういったところを無害航行というものを認められるというのは、国際法的に、あるいは海洋法的に確立されたような状況があるんでしょうか。
○政府委員(谷内正太郎君) 潜水艦の航行で問題になりますのは、特に領海部分においてだと存じますけれども、領海におきましては、潜水艦その他の水中航行機器は、海面上を航行し、かつその旗を掲げなくてはいけないという趣旨の規定が第二十条にあるわけでございます。したがいまして、この第二十条の規定は既に領海条約にもある規定でございまして、そこの部分は国際法上もはや確立しているものであるというふうに理解しております。
○山崎力君 そこのところをどうしても結びつけて考えたくなる部分があるわけでございます。その辺について、外交上あるいは軍事上の問題でそういうふうなことを公の立場で、場所で言えないという部分もあろうかと思うんですけれども、なぜ日本がこういうふうな形にするのかといった場合、そこのところを明らかにしていかないと、どうしても奥歯に物の挟まったような運用にならざるを得ないのではないかというのが私の個人的な考え方でございます。
  すなわち、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡、大隅海峡、すべてアメリカだけではなくてほかの国の潜水艦も含めて浮上しないで通航できるというようなことを日本が許しているのではないだろうか。どちらかといえばアメリカの方が十分そこのところを利用しているという部分があります。我が同盟国であるアメリカが利用しているということはございます。逆に、旧ソ連、現ロシアの潜水艦も潜航状態のままそこを通るということも十分可能でございます。
  その場合、先ほどもちらっと出てまいりましたけれども、まさに非核三原則の問題がこれあり、そういったところを日本が遠慮しているからこそこの三海里という領海を設定しているのではないだろうか。これは、ある意味で、軍事的なことからいけば当然そのところに帰着するという話をする評論家もございます。その辺のところについて、お答えできる範囲で結構でございますから、そういったものも考慮といいますか配慮のうちに入っているのかどうかという点について御答弁願えればと思うんです。

○国務大臣(池田行彦君) ただいま委員から御指摘がございました潜水艦の航行あるいは核搭載艦の航行、その関連でいわゆる五海峡につきまして現在の方針を維持するということではございません。先ほど御答弁申し上げましたように、基本的に自由な通航を全世界的に維持する、そういう政策を促進しようという観点、それからいま一つは、いわゆる通過通航制度がいかなる場合に適用されるか等につきまして、まだ国家実行の集積が十分でない、そういう事情を踏まえての政策でございます。
○山崎力君 ちょっと観点を変えますが、領海三海里の海峡部分において、接続水域、排他的経済水域の設定はどのようになるのでございましょうか。
○政府委員(西田芳弘君) 御質問の接続水域の設定及び排他的経済水域の設定でございますけれども、これは領海法改正法案それから排他的経済水域大陸棚法案においてそれぞれ定めておりまして、これらの法案において明らかなとおり、接続水域なり排他的経済水域を設定するに当たりまして一部水域の除外を行うということはしておりません。特定海域についても同様でございます。
○山崎力君 そうすると、まさにその海峡部分というのはほとんどのところが接続水域に含まれる。ということは、たしか法の趣旨からいけば、基線から二十四海里まで接続水域になるというところですから、普通のところは領海十二海里プラス十二海里の接続水域、それと二百海里まで、今回の海峡については領海三海里プラス二十一海里が接続水域、それから二百海里が排他的経済水域と、このようになると解釈してよろしいんでしょうか。
○政府委員(西田芳弘君) それぞれの法案に定めがございますとおり、接続水域につきましては原則として二十四海里まで、それから排他的経済水域につきましては原則として二百海里までというふうに定めておりまして、相対国がある場合には、相対国との間で合意がある場合にはそれに従いますし、その合意がない場合には中間線までということでございます。
○山崎力君 ですから、それは普通の答弁でございますから、二十四海里までですから十二海里の領海プラス十二海里の接続水域、それから二百海里までが排他的経済水域、今おっしゃられた答弁のとおりなんですが、海峡については領海が三海里ということになるわけですから、その三海里と十二海里の間の部分が、たしか私の承知しているところでは、接続水域というのは二十四海里までとれるということですから、その海峡部分については、基線から三海里までが領海で、それプラス二十一海里、合計の二十四海里のところまでが接続水域になるということで解釈してよろしいのかという質問の趣旨でございます。
○政府委員(西田芳弘君) 御指摘のとおり、領海以遠、接続水域の場合でしたら原則二十四海里まで、排他的経済水域の場合には原則二百海里までがそれぞれ我が国の接続水域及び排他的経済水域でございます。
○山崎力君 ちょっと質問の趣旨が通じているかどうかわからないんですが、私の質問の趣旨がそのとおりだろうということで肯定していただけたということで、次に進ませていただきたいと思います。
  この領海三海里のままということ、先ほど私が余計な内容のことを言ってしまいまして大臣もお答えに困ったような答弁をされたんですけれども、日本国家として、新しい海洋秩序のスタートラインにつくこの条約を批准して国内法を整備するときに、さきの領海法制定のときに「当分の間」という表現でなされた領海三海里の部分、その部分について大きな検討がなされないまま今回も続いているのではないかということに関しまして、私は若干の疑念をどうしても残さざるを得ないということでございます。
  先ほどの大臣の御答弁によれば、いわゆる国際海峡における自由航行というものが世界的に一つの慣習法として確立してくれば、これは我が国についても十二海里を領海の国際海峡にするという趣旨の御答弁であり、それまでの間ということが先ほどの領海法の中の「当分の間」というような表現になっているというふうに承ったわけでございます。
  そうすると、こういう法律というのは一たん決まってしまうとよほどのことがない限りそのまま放置されがちであるということが現実にございます。ということを考えれば、少なくとも今の時点でどのような状況になれば、我が国が領海三海里を十二海里にふやすんだという見通しをある程度表明していただいた方が国際的にもあるいは国内的にも納得を得やすいのではないかと私は思うんですけれども、その辺について大臣はいかがお考えでございましょうか。

○国務大臣(池田行彦君) 先ほど御答弁申し上げましたように、今回このような措置を少なくとも当分の間とる、そうした一番大きな理由は、諸国が重要な海峡における自由な通航を維持する政策をとることを促進するという、こういう観点でございます。
  さて、そういった観点から申しますと二つの道があると思います。一つは、現在我が国がとっているような三海里を続けていくということ。それからいま一つは、これも先ほど御答弁申し上げましたけれども、今回の国連海洋法条約にも規定されておりますいわゆる通過通航制度を適用するということでございます。
  しかし、通過通航制度についてはまだ十分な国家実行の集積がないということで、どういうケースにどういうふうに適用されるかということは確定していない状態でございますので、当分の間は三海里ということでいく、こう申し上げたわけでございます。
  逆に申しますと、通過通航制度について十分な国家実行が集積され、そしてまたそういった集積の上に立って重要な海峡における自由な通航を維持することが十分確保されるというふうなことが明確になる、そういう状況になりましたら、さて従来の方針を維持するのが適切なのか、あるいはそういった国家実行の集積に裏打ちされた通過通航制度を採用するのが適当なのかということは、そういった段階で検討するということはあり得ると思います。
○山崎力君 明確な御答弁だと思います。
  ただ、今の最初の三海里でということになりますと、我が国が通過通航制度の集積がないことによって、我が国がこのことをやるんですよということを対外的に言いますと、それでは日本は現在ある多くの国際海峡、世界の海上流通の根幹となるべき海峡は、沿岸国は領海を制限して公海にしていくべきであるということをこれから主張していくのかというふうにもとられかねない部分があろうかと思うのでございます。これは実質上、私の考えるところ、非常に困難といいますか、ほぼ実現不可能な状況であろうと思います。一たん主権国が我が領海と言ったものを、世界の流通その他のためにその主権、領海を放棄して公海にするということは、これは私はまず不可能と言ってよろしいかと思うんです。
  ですから、そういう点からいきますと、我が日本が国際的な今度の条約による通過通航制度が集積されていないときに、我が国が非常にオープンな形で通ってもらおうということは、通過する側の外国から見れば非常に歓迎するべき措置であろうともとれますけれども、それじゃなぜ世界的な風潮とは別に日本が集積されていないからそれまでは三海里で国際間の流通、海上交通の促進のためにやるのかというようなことを考えますと、これはやはり先ほどの軍事的な背景を考えざるを得ない。そしてまた、申しわけない言い方ですけれども、そういうことを国民に明らかにしてもいい時代になってきているんじゃないかなというのが私の個人的な見解でございます。
  そして、この領海の問題というのは、ひとつ海に限らず空の部分もこれありでございます。そういった点を考えますと、今の民間航空が外国領土を飛ぶことがほとんど問題なくできていることを考えれば、こういったものを残すというのはやはり軍事的な背景があるのではないかというふうに思わざるを得ない部分も空の部分についてはございます。
  そういった点を考えますと、やはり単に通過通航制度の集積を待って、世界的な現実なものを待って、当分の間、それまで三海里でやりますよということでは、この海洋法に対する、領海法に対する国民の理解というものは納得がいま一つ足りないのではないのかなというふうに私自身は危惧しております。
  そういった点を踏まえまして、私どもの党首が言っている普通の国といいますか、そういった言葉からもあるのでございますけれども、まずその辺のところを含んだ上での、少なくとも三海里に我が国がしたということによって国家国民が、あるいは特に沿岸の海峡に沿う住民が不利にならないような施策だけはぜひともしていただきたいと御要望を申し上げます。その辺についてのまとめの形での外務大臣の御答弁をいただければ幸いでございます。

○国務大臣(池田行彦君) 先ほども御答弁申し上げましたけれども、今回のような措置をとったと申しましょうか、当分これまでの方針を維持することにいたしました。それは、決して先ほど御指摘のございました核搭載艦あるいは潜水艦といったような観点、あるいは今御指摘のございました軍事的な考慮ということからではございません。あくまで重要な海峡における自由な通航を維持する政策を促進するという観点からのものでございます。
  そしてまた、それでは日本がこのような方針を維持しておったからといって諸外国が三海里の領海に戻ることは期待できないじゃないかという御指摘がございました。あるいはそれは常識的な見方かもしれません。しかしながら、日本がこういうふうな従来の方針を維持して自由な通航制度を促進しようという姿勢を明確にしておるということは、一方において通過通航制度における国家実行が集積される過程において、やはりそういう自由な通航を維持しなくちゃいけないんだなという配慮を各国に懲悪していくという、そういう面はあるということを御理解いただきたいと存じます。
  それからまた、最後に委員から御指摘がございましたこのような方針を維持することによって我が国の国益、とりわけそういった特定海域に接するあるいは隣接する地域においでになります住民の方々に不利にならないように十分な配意をしていくということは、お説のとおり必要なことであると考える次第でございます。
○山崎力君 終わります。
(後略)