質問「地域改善対策措置の効果について

(平成9年3月27日参議院内閣委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 まず最初に、二十八年間にわたってこの問題が実施されてきているわけでございますが、この地域改善対策のためにどの程度のお金が今まで投入されてきたのかということをお伺いしたいと思います。
  それで、今の鈴木先生の話の中で、ハード面はまあまあうまくいっているだろう、ソフトの面がまだいろいろ問題があるので、しかしそれも今回で最後にしたい、こういう話でしたが、その辺のことを含めてお伺いしたいと思います。

○政府委員(大坪正彦君) 今までどのぐらいの経費を投入してきたかということでございますが、平成五年度に行いました実態調査でその辺も、各県、市町村の状況を調べてございます。結果としましては、県のレベルでは昭和四十四年以降平成五年度までで三兆五千六百億円、市町村では十兆三千二百億円となっております。さらに、国の方では三兆六千九百億円。この辺、補助金等の重複部分がございますので、その辺を差し引きしまして、実質的な支出額としましては、国、地方公共団体合わせて十三兆円を超えているものというふうに考えております。
    〔委員長退席、理事板垣正君着席〕
  そういうような経費を投入しながら、今までハード面あるいはソフトの面でも事業を進めてきているわけでございますが、先生今ソフト面を中心にというお話がありましたので、ソフト面で今どんな状況にあるかというのを先ほどの平成五年度の実態調査の状況の中でちょっと御紹介させていただきます。
  まず、教育の面に関しましては、同和関係生徒の高等学校等への進学率が向上してきておりまして、ここ数年九割を超えておりますが、全国平均と比べるとまだ数ポイントの差が見られます。
  それから、就労の面では、若年層を中心に安定化する傾向ありますけれども、全国平均と比較すると不安定な就労形態の比率がやや多くなっております。
  産業の面では、同和関係の農業経営世帯につきましては小規模農家が多くて、農業従事者が高齢化してきております。また、事業経営世帯では小規模な個人経営が多い状況にございます。
  それから、意識の面で、結婚をケースとして聞いたわけでございますが、自分の子供の結婚相手が同和地区の人とわかった場合に、同和地区外の住民の親の態度を見てみますと、子供の意志を尊重する、親が口出しすべきことではないというふうに答えられた方が、前回、六十年調査でもやっているんですが、六十年調査と比較しまして一〇ポイントほどふえて四割強になっておるわけでございます。次いで、親としては反対するが子供の意志が強ければ仕方がないとする方も約四割になっております。ところが一方、家族や親戚の反対があれば結婚させない、あるいは絶対に結婚させないというふうに答えられた方が一割以上やはりおられるという状況でございまして、依然として意識の面では根強いものがあるというところはこの辺から来ているわけでございます。
    〔理事板垣正君退席、委員長着席〕
○山崎力君 その辺が一番難しいこの問題のポイントだろうと思います。それが今後の施策で解消されるかどうか、これはまさにある意味では個々人の意識の問題で、そこまで行政が、リードすることはできるけれども深く入っていくことができないという、これは近代国家のジレンマの部分もあるわけでございます。その辺についてこれからどういうふうな形でいくかというのは、御苦労が多いことだと思うんですが、さはさりながら今度のいろいろな問題の解決の中で周辺部分ということでの問題指摘があったことも事実でございます。
  端的に申せば、これはこれからの問題とするのは非常に難しいんですけれども、膨大なお金がその地域に投入されることによって、その他の地域、この問題がないところとの格差がどうなのかという点がおざなりになってきたのではないかなという問題意識を私は持っております。地域がはっきりしている、そこのところでの、その周辺とのトラブルというものがあった、それを物的な形でハードを整備してきた、それはそれで非常に効果を上げてきた。ところが、その周辺地域との逆差別というような発言が先ほどもございましたが、そういった問題が出てきて、それを何とか解消しようとして今までやってきたと思うんです。
  それはそれで結構なんですが、ちょっとこの際、最後の時点ですのであえて政府サイドの考え方をお聞きしたいんですが、同和地区のない都道府県がございます。これは想像がつくわけでございますが、いただいた資料によりますれば、七年度の補助交付額がゼロと言っていいようなところがございます。これは東北六県及び北海道、それから富山、石川、沖縄、こういったところでございます。
  これはある意味においては非常に幸運なところでございまして、そういった問題がない。私もそこの地の出身でございまして、この問題というものを受け取ることは非常に難しい。そしてなおかつ、東京に住んでおりましても、東京は地区指定がないということもありまして、よほど注意しなければその辺のところは見えてこない。これはある意味では非常に幸運だったわけでございますけれども、今までのそういった流れから見て、その地域の人たちは幸運だったからそういうふうなことに対しての格差というものは見えてこなかったんですけれども、地域的に見た場合、北陸を除くと、宮城、福島というところは若干豊かになっておりますが、逆に言えばそういったところの部分が同和の対策地域とのそういうハードの面での差が出てきているんじゃないかというのは、この今までの投入金額から見てある程度想定がつくわけでございます。
  そういったことに対しての、国全体としてのそういった付随的な、周辺の周辺問題と言ってもいいかもしれませんが、その辺について今まで政府として何らかの対策ないし発想があったのかどうかということをお伺いしたいと思います。

○政府委員(大坪正彦君) 先生の今の御指摘は私どもの今までのアプローチと逆の観点からの御質問でございまして、ちょっと御説明しにくい点があるわけでございますが、そもそもこういう特別対策を今までなぜやってきたかというふうな御説明の方がよろしいんじゃないかというふうに思うんです。
  昭和四十四年からこういう特別対策をやってきたわけでございますが、そのときの考え方と申しますのは、昭和四十年に同対審という審議会から答申をいただいているわけでございます。実は当時の状況といたしまして、いわゆる一般的な対策そのものからも当時の地区は対象にしてもらえていなかったというような状況のもとで、そういう例えば物的な面での格差というものが心理的な差別にも影響しているという悪循環があるというような見方が当時されていたわけでございます。そういう悪循環を断つためには、まずそういう生活環境の改善というものに力点を置いてやることが悪循環を断ち切る一つの方法ではないかということにおいて特別対策がとられてきたという状況でございます。
  そういうことが進みまして、しばらく前から先生が言われたような逆差別的な見方をされる部分も出始めましたので、そういう特別対策ではなくて、スタートの原点であります一般的な対策に戻るべきではないかというような流れがだんだん強まってきておりまして、今回の扱いとしましてはその原則でいこうというところに今来ている状況にございます。
○山崎力君 その辺の流れは無理のないことだと思って、特段の問題があるというふうな指摘は私は避けたいと思っております。
  ただ、こういったものが特にハードの面で一応終了したんだと。今、継続の、着手済みの定義の問題がございましたけれども、一応今回のもので済ませる、もう新規のものはしないと。それで、ソフトの面をやって、この次にはもうこれを延長したくないというのが政府の方針である、こういう御説明でございます。
  それはそれで非常に結構なことなんですが、逆の立場からのアプローチとおっしゃいましたけれども、政府であるならば、この一つの成果が出た時点において、その地域と全く関係のない地域の都道府県間、実際にはそれだけのお金が対策のために投じられた部分と投じられなかった部分との差がどの程度出ているのか出ていないのかというくらいの点検はやはりしていただかないと、国全体の問題からすればちょっと問題ではなかろうか。それがいい悪いという、だから先にやったといいますか、前に進んで金を投じたのがよくないというふうな意味ではないんです。その結果、終わったときにはこういう状態でしたと。それを判断して、もし仮にそこに差があるならば、これは一般的な事業として差のある都道府県に対してそれなりの措置をとっていくということも、この時期といいますか、ちょうどこういった切りかえどきには必要なことではないか。
  そういう調査を、集落その他何でも結構でございます、いろんなあれがあると思うんですが、そういったことを政府側としてはやるべきではなかろうかと私は思っておりますので、その辺の考え方をお伺いして、あとは鈴木先生がいろいろお聞きなさったことと重なりますので割愛させていただいて、その辺のところを総務庁長官からお伺いして、私の質問を終えさせていただきたいと思います。

○政府委員(大坪正彦君) 先生から地区あるいは地区外との比較というお話がございましたので、先ほどの平成五年に行いました実態調査の中で出てきております数字をちょっと御紹介させていただきます。
  ハードの面におきまして、例えば住宅につきまして、一世帯当たりの平均畳数あるいは世帯員一人当たりの平均畳数、こういうものをちょっと調べているわけでございますが、一世帯当たりの平均畳数で見ますと三十一・三畳になっております。全国的な数字としまして平成五年に住宅統計調査がされているわけですが、ここにおきましては三十一・五畳ということで、ほとんど同じ数字でございます。これは一世帯当たりの畳数でございます。それから、世帯員一人当たりの平均畳数で見ますと、十・一畳が地区の関係でございますが、全国的には十・四畳でございます。例えば住宅ですとこういうようなことで、ほとんど差が見られないという状況になっております。
  それから、道路につきまして申し上げますと、住宅と道路の接道状況、家の前にどのぐらいの広さの道路があるかという接道状況でございますが、幅員四メートル以上の道路で比較した場合、五七・五%で、全国平均とほとんど差がない、こういう数字も出たわけでございます。
○国務大臣(武藤嘉文君) 今いろいろとございましたが、私は率直に言って、今の御質問のとおり、この日本の社会でそういういわゆる差別的なものが全くなくなっているという状態が一番望ましいと思います。今まではなかなか、政府がこれだけやってきてもいろいろのそういう問題で差別的なものが残ってきたというのはまことに残念でございますけれども、また今一面からいけば逆差別的なところも、一般事業と比べれば特別事業の方は補助率が高いんですから、当然何らかの形でプラスになる、プラスというか一般のところより以上のものもところによっては私はあったんじゃなかろうかと思います。そういうものがなくなって、日本の地域社会どこも全部同じような形になり、また日本人はみんな同じような考え方、同じような立場でおつき合いができるような、そんな社会にするのが一番望ましいわけでございますから、ぜひ今後のこの五年間で何とかそういう社会になるように私ども政府としては全力を振るって努力をしていかなきゃいかぬと、こう思っております。
○山崎力君 そのように御努力願いたいと思いますが、私の質問の趣旨が最後ちょっと伝わったかどうか疑問なんですけれども、要するに今までの施策はそれとして、ハードの面でこれだけのお金が地域的に、その地区が多いところは当然のことであるわけですけれども、投入されてそれはそれなりのあれになったと。それが一応そろったという時点で、今そういう地区が多かったところと全くそういうところがなかったところと、単に全国平均といっても違ってくるわけでございますので、そういったところの成果を政府としてさらって、そこのところがこれからの、ある意味では国土開発といいますか、国土整備、都市整備の一つの目安といいますか、どうやっていったらいいかという基礎データをこの際この問題と絡めてというか、この問題を踏まえた上でのデータをそろえていただいて改めて検討していただきたいということでございますので、その辺のところをよろしくお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
(後略)