質問「『自然災害と事故災害について』他

(平成9年6月13日参議院災害対策特別委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 平成会の山崎でございます。
  まず、先般秋田県八幡平で起きた土石流の問題から取り上げていきたいと思います。
  幸い、人的被害はなかったんです。旅館を押しつぶして、宿泊客は事前に辛うじて逃げたということで人的被害はなかったんでございますけれども、そのときのその後の報道等を見ますと、いろいろな条件が重なってさような結果になったというふうに理解しておるんですが、その辺のところを担当の省庁としてはどのように判断なさっているか、まずお伺いしたいと思います。

○説明員(池谷浩君) 建設省としての考え方を述べさせていただきます。
  ただいま先生からお話がありましたように、秋田県鹿角市の八幡平におきまして、本年五月十一日に発生いたしました土石流によりまして温泉宿二軒十六棟が全壊いたしました。幸いにも人的被害は生じておりません。
  これの原因といいましょうか理由を考えますと、一つには施設の効果を挙げることができるんではないかと思います。御承知のように、上流砂防ダム並びに平成八年の二月にちょうど砂防ダムが一基完成いたしました。これらのダムによりまして、土石流が下流に流れ下ることを防止しております。下流への被害の拡大を防ぐことができたということが挙げられます。
  またもう一点は、避難の効果が挙げられると考えております。この土石流が発生する前日までに上流の澄川温泉周辺におきましてクラック等の前兆現象が種々出ておりますが、これらを温泉の経営者が鹿角市等へ的確な通報をされまして、これを受けて迅速な避難ができた。このために人的な被害が免れたんではないか、こういうふうに考えております。
  また、この地域でございますが、昭和三十六年それから昭和四十八年にも山崩れや地すべりが起こっておりまして、地域の住民の方々が土砂災害に対して危機意識を持っていたのではないか。また、平成六年には秋田県が作成いたしました土砂災害危険箇所マップを鹿角市を通しまして配布しておりまして、これらの啓蒙活動が的確に避難活動に役立ったんではないか、このように考えております。
  いずれにしましても、五十万立方メートルという大変大規模な土石流にもかかわらず被害を最小限に防げたというのは、事前に実施されていたこのようなハード面での土石流対策と、適切に行われた避難というソフト面の両方相合わさっての効果と、このように考えております。
○山崎力君 今のハード面はもちろんあったわけですけれども、そのハード面だけでは温泉宿の方の崩壊は救えなかったわけで、下流の被害を防いだという効果だったと思います。そして、温泉宿の方はクラックを事前に発見して的確に通報された。これはやっぱり住民の方の意識の高揚、高揚というんでしょうか高まり、そういったものとそれを受け入れるシステムが制度的に整っていたということの教訓だろうと思います。そういった面をこれからの国土防災行政に生かしていただきたいという御要望で、次の問題に移らせていただきます。
  防災基本計画に関することでございます。さきの渡辺委員からも発言ありましたけれども、今回初めて事故災害対策についてこの計画に大きく項目を割いておられる。そこで、ぱっと読ませていただいたというか見させていただいた段階で気がついたことなんですが、いろいろな事故災害のうち、航空災害対策についての災害復旧の記述が、ここだけ章が立っていないんです。このことについての理由、どういうことになっておられるか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。

○政府委員(福田秀文君) 防災基本計画としての性格上、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、まず取り上げるべき災害というものは通常一般的に想定されるような災害、これを取り上げております。また、記述すべき内容につきましても、通常一般的に想定されるような状況をもとにして、それに対する対応を記述しておるわけでございます。
  それで事故災害、ほかの例えば道路災害をとってみますと、これは災害復旧の関係で見てみますと、一般的に道路災害の場合には道路が損壊をしております。その道路を災害復旧するというようなことが当然想定されるわけであります。また、市街地の大規模な火事災害、こういうものを見ま
しても、復旧のための町づくりというような復旧作業というものが当然のことながら想定されるわけでございますが、航空災害の場合には、航空機の墜落に伴う人的な被害の救済というようなところに主眼に置かれておりまして、施設の復旧というようなことについては、一般的には想定されないというようなことで章立てはしなかったわけであります。
  ついででございますけれども、この基本計画では、八つの事故災害のほかに、また出てきた場合にはそれに対処できるように共通編という編を設けております。その共通編は、八つの災害について記述してないものについて補足するような意味も持っております。そんなことで、航空災害についても何かしら復旧が必要だという事態になれば、共通編の方が参考になって働いてくるというふうに考えております。
○山崎力君 今の御答弁では、なぜ省いたかというのがいま一つ不十分ではないかと思います。と申しますのは、後ろの方からいきますと、ほかのところが参考のあれでなるということであれば、その旨災害復旧に関して記述すればよろしいわけです。
  航空機災害の災害復旧に関してはいろいろな形態が考えられるので、それぞれに合った、事故形態にのっとった災害復旧をとる。あるいは、もう一つ言えば、飛行場で落ちるケースが非常に多いわけですけれども、そこのところで現在の航空機の需要から考えれば、飛行場においていかにそこの空港機能を復旧するかということも、これ大きな特有の問題だろうと思います。その点からいって、いま一つ納得できない御答弁であると言わざるを得ないのが残念であります。その点からいきまして、航空機災害というところでいきますと、非常にすべてのことの原因になり得るということがございます。
   それと同時に、この航空機災害だけでなくて、今度の事故災害、前のこの委員会でも質問させていただきましたけれども、要するに被害が起きたとき、その損害賠償、補償をどうするのかということが自然災害と事故災害の性格で一番違っているところだろうというふうに私は認識しているところでございます。そういった意味で、航空機事故の場合の災害復旧に要した費用というものが、乗客それからもう一つ、地上等での第三者への被害というのは当然考えられるわけですが、そういった点ではどのように考えられておられるんでしょうか。

○説明員(井手憲文君) お答えいたします。
  不幸にして航空機の墜落等の事故が発生いたしました場合の対外的な損害賠償の関係でございますが、先生御指摘のように二つに分けて整理すべきかと思っております。
  まず第一は、当該事故に遭遇した航空機の中に実際に乗っておられた乗客の方々、こういう方との関係では世界的にはワルソー条約等関連する条約がございまして、具体的に乗客との関係で航空会社が運送契約という形で運送約款が締結されるわけでございますが、この運送約款の中に、条約を受けた形で損害賠償の限度額あるいは責任要件といったものが決められてございます。これは国際線の場合でございまして、もう一方で国内線でございますと、条約の適用関係は発生いたしませんが、同様に乗客と航空会社の運送約款の中でその辺の取り決めをしているということでございます。
  さらに第三者、乗客ではない航空会社にとっては第三者になります地上の関係の方々に被害があったという場合につきましては、これは御案内のとおり、航空会社とその第三者との関係においてもともと運送契約あるいは何らかの契約といったものがあるわけではございません。これは一般的には民事上の、例えば民法七百九条といった関係が事故の後に発生する法律関係になろうかと思うんですが、これにつきましては、約款はもちろんございませんので、対外的にはそういった形で実際の民事上の賠償をどういうふうにするかという問題が発生するものと考えます。
○山崎力君 いろいろ長く御説明願ったんですが、常識的なことでございますけれども、問題は、行政としてこれに対しての問題点があるかどうかということを考える必要があると思うんです。
  最後に、大臣にお伺いしたいんですけれども、こういう事故災害対策というものの場合、復旧事業を含めて、費用の面からいきますと、今第三者とおっしゃられたような形で損害賠償の問題が当然出てくるわけです。この飛行機のことを取り上げたのは、非常に目立つから取り上げた形なんですが、ほかの事故災害でもすべて共通、これはもうこの間の日本海のタンカー事故で非常に明らかになってきたわけです。そうなってきますと、航空機事故ですと、先ほどの話にありましたように、落ちた飛行機の会社によって損害補償の額が大幅に違ってくるという現実があります。この間の名古屋の中華航空の事故でもその問題は言われております。
  また、広げた意味でも、例えば航空機事故というのは、落ち場所によっては大災害の引き金になる可能性がある。そういったこととか、あわせて原因者にどこまで負担能力があるのか、保険に入っているのかということで極めて大きないわゆる被害補償の補てん率の差が出てくる。そういったものが押しなべた形で事故災害にはあるんだという認識を私は持っているんです。
  今回の基本計画には、その辺のところの記述がほとんど私は読み取れないというところで、最後に大臣に、この辺の各種類による対策を国としてどう取りまとめてこれから事故災害に当たっていこうとしているのか。その辺の御認識を伺って、質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(伊藤公介君) 事故災害につきましては、当然事故の原因者が存在をするわけであります。原則として、被害者に対する補償あるいは復旧事業に要する費用を含めまして当該事故原因者が負担をするということが原則であります。
  御案内のとおり、御指摘ありました今回のナホトカ号重油流出事故に関しましても、これはあくまでも最終的には民事問題で解決をしなければなりません。しかし、国際的な問題に発展する場合もあるわけでございまして、このナホトカ号重油流出事故につきましても、国際的な問題に関しては政府がまたそれをバックアップしていかなければならないということも当然あるわけでございます。しかし、原則としてこうした事故災害については、それぞれの民事問題として解決をしていかなければならないということが基本であろうというふうに考えております。
(後略)