質問「『北朝鮮の弾道ミサイルについて』他

(平成10年9月17日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 最初に北朝鮮のミサイルに関して外務省にお尋ねしたいと思います。
  私最後の質問になりますが、今までずっと来て、田村委員からも若干似たところがあったんですが、外交上、今回のことについて言えば、弾道ミサイルなのか人工衛星の打ち上げロケットなのかというようなことで言われておるんですが、この用語ですね、意味するところが外交上違っているんでしょうか、それとも同じと考えていいんでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 御質問の趣旨がちょっとよくわからないんですが、例えば……
○山崎力君 ちょっとそれじゃ、要するに新聞報道その他を見ますと、弾道ミサイルというと非常におどろおどろしいような印象を国内的には受けるし、あるいは人工衛星打ち上げのロケットだといえば若干平和利用的な部分も入ってきて薄まるというふうに日本語では印象を受けるんですが、これが外交上そういった日本語的な使い分け、そういったものが影響してくるのかこないのかと、こういう点です。ですから、大臣というよりも、むしろその任に当たる方の方がその辺の実情はわかっているのかなという気もしますけれども、いかがでしょうか。
○政府委員(阿部信泰君) ロケットという場合には推進装置に着目しましてロケット推進ということでございまして、ミサイルの場合はこれは武器に着目してミサイルですということで、現実にはロケットがミサイル推進に使われる場合もありますし、あるいは巡航ミサイルなどはジェットエンジンを使っているわけであります。したがって、全く同じロケットが場合によっては民生用の人工衛星打ち上げに使われる場合もあるし、軍事用のミサイルに使われることもあるということで、外交的と申しますか、一つ国際的なレジームとしてミサイル輸出管理レジームというのがありますが、そこで輸出の規制は、まさにこれは両方に使えるということで、ミサイルであれロケットであれ同じように規制しています。
○山崎力君 私も若干勉強させていただいておりますので、その辺のところ、余り外交上といいますか、国際上は関係ないよということだろうと思うんです。国によっても同じものをロケットと呼んだりミサイルと呼んだりということが、違いがありますから。
  そこで、私がそれに関連してお伺いしたいのは、今回はともかくとして次回あるとした場合、北側が衛星打ち上げを国際的な問題とされている点、すなわち事前通告、警告、あるいは危険区域の設定、そういったものをして打ち上げた、ただし日本の上空を通過すると、こういった場合、国連の安保理が今回のような対応をとってくれるのかどうか、けしからぬと。我々はけしからぬと思うんだけれども、国際連合がとってくれるのかなというのが私の現時点での疑問なんですが、ちょっと質問通告の関連ではずれているかもしれませんが、お答えいただければと思うんです。

○政府委員(阿南惟茂君) 恐縮でございますが、今、先生の御質問は、今度北側がきちんと通告をして人工衛星を打つという……
○山崎力君 ええ、そう、当然。
○政府委員(阿南惟茂君) これはそのときの態様にももちろんよるわけでございますが、人工衛星打ち上げの国際的な慣例に従った通告等をする限りにおいて、それはそれでどの国も人工衛星を打ち上げられます。
  ただ、今回の北側の場合には、今現在も北側はまだ上がっているということになっておりまして、ですからそういう点できちんと……
○山崎力君 時間がありませんので、私の質問に答えていただきたい。今回は抜きでということで、次回のことで私質問しておりますので、済みません。
  それでは、今回の事件で防衛庁の方にちょっとお伺いしたいんですが、いろいろ細かいことを言っております。難しい点もあるのは重々承知の上で時間の関係で端的にお答え願いたいと思うんです。
  今回の東洋通信機、敵味方識別装置、IFFの問題、機密性の極めて高い、戦術的といいますか兵器的に見れば非常に大切な機密度の高いものをライセンス生産していて、一カ所だけで云々と、そういったときに価格の問題が今回非常に大きな問題になっているわけですけれども、これはアメリカとの共通性を考えてみても、当然アメリカからのライセンス製造になっているわけですが、そのアメリカで同じようなものがどの程度の価格だということは当然比較されていると思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

○政府委員(及川耕造君) 例えば、アメリカのIFF装置との価格の比較等でございますと、最近直近の例でございますと、現在開発中のSH60J改に搭載いたしますIFF装置については比較等を行っております。結論は余り大差がないと。
○山崎力君 そうすると、今回問題となった東洋通信機の機材、具体的なのは承知しておりませんけれども、それはかなり差があったということで考えてよろしいんでしょうか。
○政府委員(及川耕造君) 五年にわたるさまざまな物品でございますので、それぞれの費目について米国との比較はいたしておりません。
○山崎力君 最終的な報告の場合はぜひそれをやっていただきたいと思います。
  そこで問題なのは、そういったものが適正な価格なんだということを判断するのが極めて難しい、機密度も高い、そういった中で国として、会計検査院の方はおいでになっていらっしゃいますか。それでは、会計検査院としてそういったものが適正か否かというものを判断する材料を今までお持ちなのか、それともどうだったのかという点はいかがでしょうか。

○説明員(諸田敏朗君) お答え申し上げます。
  非常に機密性の高い調達品につきまして私どもが価格の妥当性を調査するということは非常に困難でございます。
○山崎力君 ですから、非常にこの問題というのは国家の安全保障で、ブラックボックスでやらざるを得ない部分がある。そこのところで今回こういった背任の問題が出てきたという意味では、一般に代替のきく入札あるいは競争入札、そういったものを想定したものでは非常に困難な、そういう意味ではそういう状況を奇貨として行為を行ったということでは極めて悪質だというふうに言わざるを得ないと私は思うわけでございます。
  そういった中で、ただこればかり言っていてもしょうがないんですが、ちょっと広く目を持ちまして、過日佐藤道夫委員からも出たんですが、これは現在背任ということでやっております。これは取り過ぎたんじゃないか、水増しした、返せと。その返す部分が少なかったから背任だということなんですが、法務省の方にお伺いしたいんですけれども、もしそれに気がついて請求しなかった場合、まあいいや、次の製品で予算もぎりぎりで赤になるかもしれぬからその穴埋めにしてくれというような形で請求しなかった場合は、これは背任になるんでしょうか。

○政府委員(松尾邦弘君) 先生お尋ねの事項につきましては、現在東京地検の特捜部を中心に刑事事件として捜査をしております。したがいまして、その具体的内容にかなりかかわる事項ということでございますので、その性格上ちょっとお答えをいたしかねる事項でございます。
○山崎力君 一般論としてもでしょうか。公務員が、いわゆる犯罪に二種類ありとするかどうかの問題はあるんですけれども、水増し請求があった、気がついた、これをまずどうやってやるか。司法に訴える手はある。あるいは話し合いで返還させる手はある。黙認する手はある。司法に訴えればこれは問題ないでしょう。恐らく、先ほど言った刑訴法の二百三十九条絡みで問題ないでしょう。
  それで今回の場合は、そこのところを民事的にというか示談的にといいますか、そういったことでやったこと自体ちょっとお伺いしたいんですけれども、その辺の判断を、それではこれは長期的な観点から見てこのくらいの金額だったら取らないで目をつぶってやる、こういうことは防衛庁に限らずどこの省庁でもあり得ることですけれども、そういった場合は背任の形、逆に言えば、今回目をつぶれば、ある意味では二十何億のお金が余分に向こうへ流れた。それを八億にまけた、それでも八憶が国に返ってきた、それでも背任だと。では、全額目をつぶったらこの人は背任になるんですか、ならないんですか、理論的にはどうなんですか。

○政府委員(松尾邦弘君) 繰り返しになりますが、具体的な事案にかかわる形でのお答えというのはなかなか難しいわけですが、一般論としては先生御指摘の刑訴法の二百三十九条の二項には、古めかしい言葉ですが、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」という定めがございます。
  この趣旨はおよそ、行政が適正に行われるためには国または地方公共団体における各種の行政機関が相互に協力することが必要でしょう、全体として一体として行政機能を発揮することが重要であるとの認識のもとにつくられた規定と理解されますが、犯罪の捜査についても同様でございまして、各種の行政機関の協力が必要であるという見地からはこの二項の規定が置かれております。
  ここに規定してありますような要件を満たす場合には、一般的に言えば官吏、公吏は原則として告発義務を負うものと理解されるということになろうかと思います。
○山崎力君 お答えがちょっとずれていると思うんですが、確かに難しい点はあると思うんです。これは一種の義務規定でありましょうし、ただしそれには恐らく罰則がついていないわけです。だけれども罰則がないから、その訓示規定に、犯罪がありと思料して、国家あるいは地方公共団体に金銭的な損害を与えたということが明白であって、これは明らかに刑事処分をしなきゃいかぬと思ったときに、それを何らかの思惑でやらなかったという公務員に対して背任がかかるのかかからないかというのはある意味では法律上極めて重要な問題だと思うわけで、その辺についてのお答えがいただけなかったということもちょっと残念なんです。
  もう一つ言えば、そこのところで、これは司法に対する問題ですけれども、これはどこにお尋ねしていいのか、法制局の方に投げかけたまま、はっきりした担当がわからないんですけれども。こういった場合の裁量権、要するに国ないし地方公共団体その他の公務員絡みの、予算執行絡みのときに不当なお金が流れ出た、一種の不当利得が相手方に生じた、それに対していわゆる行政側とすればどうやってこれを回復するか。一つは、確かに今言ったような犯罪の思料を得た場合という形で訴えることもできるでしょう。あるいは示談的な形でやりたいということで、今回みたいな形で返還させるということがあるでしょう。それが果たして刑事罰に相当するのか、それとも行政内部でやっていいのか。
  前にも私質問で言いましたように、納税のときの、これは節税対策であるとか、いや脱税であるとかということで修正をさせる、あるいは新たに課徴金といいますか多くの金をかえって取る、あるいは脱税で訴える。これは一種の行政判断として、もちろん司法当局との相談の上でしょうけれども、大蔵なら大蔵の国税がそれをやっているわけですね。そういったことを各省庁でやっているはずなんです。そのときの判断基準がどこで行われているか。そこのところの裁量権はまさにそれを担当したところのセクションの人間でしかわからないわけです。
  その辺について、さりとてその辺の裁量権を公務員に与えたという根拠法も見当たらない。ある意味においては、ある省ではここのところは訴える、ある省では訴えない、ある省では返還させる、ある省では黙認する、こういったことでばらつきが出てくる可能性も理論上あり得るんですが、その辺についてのお考えがあれば伺いたいと思うんです。

○政府委員(秋山收君) お尋ねでございますが、やはりある程度具体的な個別の事例を想定してのお尋ねだと思いますので、この場合には恐らく国が調達をするという民事契約を結ぶということに関連しての、その結果生じた不当利得の債権、これをどう扱うかという問題でございますので、まず、そのような債権の管理を所管する担当省庁においてどのような判断でそういう措置を講じているのかということをお答えいただくのが適当なのではないかと考えます。
○山崎力君 ということは、それぞれの省庁のこれまでの慣例によって、違っていてもそれを統一的に運用すべしという法体系にはなっていない、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
○政府委員(秋山收君) 民事上の問題でございますので、民事上適切な処理が民事のルールに従ってなされるということであろうと思いますが、冒頭申しましたように、何らかの個別の事案を想定して考えざるを得ない問題であると考えますので、法制局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
○山崎力君 そうすると、今の法制局の御答弁だと、今回の問題というのは、まさに民事上の問題を、これは背任の部分は別として、民事上の不当利得を防衛庁の担当者が、担当部局が、一種の話し合い、示談によって返還させた、こういうふうに受けとめられるんですが、防衛庁いかがでしょうか。
○政府委員(及川耕造君) 恐らくそういう点に関する御議論というのもあるのかもしれませんので、まさに捜査そのものの論点になっている可能性もございますので、ちょっと私の方からお答えは控えさせていただきます。
○山崎力君 そうすると、捜査の問題とおっしゃるんだけれども、これは背任の捜査をしているんですよね。要するに、民事上、今回のような事案が生じたときに、防衛庁として、相手方の不当利得に対して民事訴訟を起こしなさいというのか、示談をしていいんだ、話し合いでやりなさい、あるいはある場合には黙認してお金を取らなくてもいいと、この程度のことであれば。その判断は、少なくとも防衛庁、今回においては防衛庁のその担当者の、もちろん上の許可は要るんでしょうけれども、その人たちの裁量権があるんだということになると思うのです。
  これは、減額したから背任の容疑になっているわけで、減額しないで満額やった、先ほどのあれでいえば、東洋通信機以外のことが適正に処理されていたとすれば、まさにそのところで防衛庁は今までやってきた、恐らくはかの省庁もそうだろう、私はそう思うんですが、その点についていかがお考えでしょうか。

○政府委員(及川耕造君) 恐縮でございます。その点についても論議があるかと思いますので、御容赦願いたいと思います。
○山崎力君 論議があるかどうかはわかりませんけれども、少なくとも、これは防衛庁一つだけでなくて、国の行政、金を扱う部分について共通の問題だと思うんです。
  その辺のところを、どこも今までやってきていないというのは、国家として金の使い方、それからその金が不正に使われた場合、不正というか不当に使われた場合の回復についてのシステムができていない、統一されたシステムができていない、私はそう考えざるを得ないんですが、最後に法制局に振って申しわけないんですが、政府の法律を最終的に判断するところとして、こういう疑問を持つことについていかがお考えでしょうか。

○政府委員(秋山收君) 現行法に何か不備がある、あるいは現行法上改善すべき点があるということで担当の各省庁がそういう立案をするということになりましたら、私どもとして相談に乗るかあるいは審査するということになる、私どもはそういう立場でございます。
○山崎力君 わかりました。
  法制局としてはそういうお答えだと思うんですが、簡単に言うと、やはりこの問題というのは、行政府の方から自分から手を縛るような法律は出てこない。ということは、むしろ我々立法府の方の問題ではないだろうかというふうに私自身改めて認識したいということで、時間ですので私の質問を終わらせていただきます。

(後略)