質問「対人地雷廃棄の代替手段について

(平成10年9月29日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 総理にお尋ねいたします。
  一連のこの中で、まさにいろいろな事情はあるにしろ、戦術的には非常に有効な防衛手段としての兵器をみずからの手を縛る形で禁止する、こういうことでございます。
  その中で、当然防衛庁あるいはそういった軍事的な観点からすればその分弱体化するわけですから、その辺、国防上これを補う兵器あるいは軍事体制をとりたいということは、これは当然のことだろうと思うんですが、その辺はどのように総理お考えでございましょうか。

○国務大臣(小渕恵三君) この点は先ほど御答弁申し上げましたが、それに代替する手段として、防衛に万全を期する観点から防衛庁におきまして、条約上の対人地雷に該当せず、一般市民に危害を与えるおそれのない代替手段として、センサー、爆薬等を組み合わせ、監視、遠隔操作により要員が関与して作動させる装備である対人障害システムの研究を平成九年度より鋭意行っておるところでありまして、このような代替手段が装備化されるまでの間は指向性散弾の使用等により我が国の防衛に万全を期する考え方である、こういうことであります。
○山崎力君 その点でございますけれども、私が総理にお願いといいますか、政府として考えていただきたいのは、今回の要請というのは、むしろ総理みずからなさっていらしたいわゆる外交上、それから全世界における日本の立場をアピールしたいということだろうと思うんです。
  そういった点で、その代替兵器を今一生懸命なさっているということで、それはそれで当然お願いしたいわけですけれども、その辺のところで一番問題になるのはお金の問題でございます。ただでできるわけでもございませんし、それから地雷というのはほうっておいてもある程度戦術効果があるというのが特色なんですが、それをウォッチしていなければならない、人も必要になる、それなりの部隊編成も当然必要になってくるでありましょう。それをいわゆる今ある防衛計画の中と別の形でやらなければ、当然その分、装備あるいは補充されるべき人員、そういったものに対するしわ寄せが来るというふうに私は考えるわけでございます。
  その辺を財政的な面で、総理みずから音頭をとってなさったことを防衛力の低下という形で日本国内だけに押しつけるというのはいかがなものかという気がいたしておりますので、その辺のところを財政当局に予算措置、そういったところを明確に御指示しているのかどうか、またするつもりがあるのかどうか、その辺のところをお伺いしたいと思います。

○国務大臣(小渕恵三君) この点は防衛当局として適切に対処しておると存じますし、またそれについては私自身も責任を持ってそうしたことの問題が残りませんように、財政的な措置につきましても考えていくべきものと考えております。
○山崎力君 その辺のところは非常に埋もれてしまう部分で、内局それから主計との予算折衝の中でどうなんだということはなかなか出てこないところではあるので、総理みずからがそういう観点でなさる。
  それからもう一つ、この問題は、非常に総理には申しわけないんですが、総理一代で解決する期間の問題ではない。恐らく四、五年はかかるでありましょうし、それからそういった兵器を開発できたとしても装備するまでには何年もかかる。恐らく向こう十年くらいでいくものだろうと思うわけでございます。
  似たような問題として、中国大陸のいわゆる毒ガス弾の処理の問題、これも膨大な費用がかかる。これは防衛庁がある程度助けなければいけない。外交絡みのこういった防衛の問題について、どうしてもそれは予算的な部分というのがかなり重要になってくるものですから、その辺のところ、これから後の議論でもちょっとお尋ねしなければならないと思っているんですが、いわゆる総理大臣として音頭をとってこういった枠組みをとられたわけですから、その財政的な面、制度的な面について、これは防衛庁だけでなかなかやれる問題でなくて、大蔵の方にも指導力を発揮していただかなければならない問題でございます。
  それから、外務省も一たん自分のところでやったからもうその辺のところは関係ないやと、防衛庁と大蔵省で話しなさいという立場をとられると、非常にこれもまた若干問題のあることでございますので、まさに指導力を発揮するという意味で、各省庁を統括した形で今後の防衛体制をとるんだという御決意を御披露願えればと思いますが、いかがでございましょうか。

○国務大臣(小渕恵三君) 万遺漏なきを期して努力いたしたいと思っております。
○山崎力君 よろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
(中略)
○山崎力君 それでは、対人地雷の問題についてお伺いしたいと思います。
  同僚委員よりいろいろな角度から質問がありましたが、まとめという形での質問になろうかと思うんです。先ほどの総理の発言にもありましたように、これに対する負担増についてはもう格段の措置をとるというふうな形で総理もおっしゃっていただいたわけですが、防衛庁にお伺いします。簡単に言いまして、もちろんこれからの開発その他、あれがありますけれども、人員増も含めて、今回この条約に入らないで地雷をそのまま利用していた場合と、これからの開発、装備、あるいはそのための人員増、そういった簡単に言えば今回の条約に伴うコストアップというのはどのくらいになるというふうに考えていらっしゃいますか。

○政府委員(佐藤謙君) 今回の条約の加盟に当たりまして、私どもとして、コスト増といいましょうか負担増となり得るものは、まず廃棄の問題、それからその新装備を装備する問題と、大別して二つあろうかと思います。
  まず、廃棄の方は、私ども平成十一年度からまず四億円の計上をし、それで四年間で廃棄する大体のめどが立っております。こちらの方は約十八億円から二十億円ぐらいで廃棄できるのかと、こんなふうに思っております。
  一方、新しい対人障害システムの方でございますけれども、これは九年度、十年度と調査費をいただきまして調査をし、今度六億円の予算で十一年度に参考品を購入して実際の運用等もやってみて、それでもって決めていきたい、こう考えておりますので、今の段階で全体として幾らになるかという点につきましては、ちょっとこちらの方はまだ明確に申し上げられない、こんなふうな状況でございます。
○山崎力君 これはある意味では人道に対する費用だと思うわけです。それで、総理はその辺の費用は政府として持つよというふうに先ほどおっしゃられたと私は受けとめております。他の装備品あるいはそういった点での負担増、圧迫はしないというようなことをお約束されたと思うんですが、一つここで問題になるのは、現在の我が国が会計上単年度主義をとっているという、そういった点があると思うんです。その辺も踏まえて役所の引き継事項にもなっていくと思うんですが、大蔵省おいでになっていらっしゃいますか、その辺のところについての詰めといいますか、総理の指示というのは大蔵省には来ているんでしょうか。
○政府委員(坂篤郎君) 総理大臣から特段私どもに具体的な御指示というのはただいまのところまだ承っておりませんが、先ほど私、総理の御答弁なさるのを後ろで聞いてはおりました。
○山崎力君 聞かれてどういうふうにそのポストの任に当たる者として受けとめられたでしょうか。
○政府委員(坂篤郎君) 対人地雷の代替手段につきましては、今防衛庁から御説明がありましたが、九年度から研究開発を始められておりました。また、十一年度予算の概算要求、この前いただいたわけですが、それには対人障害システムの参考品購入ということで約六億四千万円、これはすぐにというのではなくて、先に買うというようなものも入りますが……
○山崎力君 もう時間がないので、数字を一々聞いているわけじゃないんで、総理の先ほど言ったことについて主計局次長としてどのような受けとめ方をしたのかということを私は質問しているんです。
○政府委員(坂篤郎君) 失礼いたしました。
  当然、総理の御意向でございますから、そういうのも考えまして、財政当局といたしましては全体の防衛予算の中で適切に対処してまいりたい、このように考えております。
○山崎力君 全体の防衛予算の中ではないんじゃないですか。私が総理に言ったのは、これは今までのと違って新たな負担増になるんですよ、その辺のところを含めた上でお考えはいかがなんですかと、大意としてはそういうふうに質問したわけで、それは遺漏なきようにいたしますというふうに総理が言われたということは、今防衛予算の中でということでいえば、もちろん定義的には防衛予算になるんですけれども、従前の防衛予算の範囲とプラスの部分でこの問題を対処するというふうに受けとめていただかなければ、総理の先ほどの答弁を大蔵省として受けたということにはならないんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○政府委員(坂篤郎君) 予算と申しますのはやはり全体として、防衛予算ばかりではありませんが、考えるものだろうというふうに思っております。ただ、本件につきましては、財政当局といたしまして、これらに要する経費につきましては防衛予算全体を見る中できちんと予算措置を講じてまいりたいというふうに考えているということでございます。
○山崎力君 どうも先ほどの総理の答弁と今の大蔵省の答弁とは違うような感じがいたします。この問題は改めてちょっと問題とさせていただきたいと私は思うわけでございます。
  時間の関係もございますけれども、今度は防衛庁に戻らせていただきます。
  確かにおっしゃることはわかるんですけれども、代替兵器が非常に難しいということはこれはもう関係者であればわかっている話でございまして、それを補完するにはないわけじゃないよと。ただし、今までの地雷であれば、ほっておけばそこのところでそれだけの戦術効果があらわれたのが、遠隔操作であれ何であれ人員を配置してやるためにはそれだけの人間が必要であると。要するに、どこの部隊に所属するかは別として、そのための監視要員が必要となるということは理の当然でございまして、その辺の人件費も部隊編成を変えてその増加分をふやさにゃいかぬ。
  それから、開発費が幾らかかるか。これはもちろんやってみなきやわからぬ部分でしょうけれども、とんでもない天文学的な額になるということもこれも問題だ。開発しました、それを装備するのに幾らかかる。簡単に言えば百万発の対人地雷に匹敵する装備をするのに幾らかかる、このくらいのある程度のめどを立てないで、これを単に人道的だということからいってオーケーするというのは、国防の任にある庁としては問題がある。
  もっと端的に言えば、それだけのお金があるんだったら、その分を外務省なりODAにやって、世界じゅうに隊員を散らばして対人地雷を撤去した方がよほど世界の困っている人たちのためになるかもしらぬ、そういうふうに私は感じるんですが、その辺についての御答弁をいただけないでしょうか。

○国務大臣(額賀福志郎君) 今、山崎先生の御指摘でございますけれども、例えば対人障害システムあるいはその開発するまでの暫定的な措置として指向性散弾措置をとるという場合に、今までの対人地雷よりも人員がふえるではないかということでございます。
  私は、対人地雷の場合も伏せておいてそのまま放置しておく場合もあるかもしれませんけれども、そこが敵にとっても味方にとっても有力な陣地であれば、当然監視要員がいることになっているはずでありますから、人員の場合はそんなに差が起こってこないのではないかというような気がしないでもありません。
  一方で、先ほど来のコスト増でございますけれども、平成九年から技術研究をやっておりまして、ことしは試験的にいろいろやってみるということで、これまでの経験、研究からすると向こう四年間で大体同じような機能を発揮できる代替装置を、手段を開発できるのではないかという見通しを持っておるところであります。
  したがって、国防上これは百万発の地雷を廃棄するのに二十億前後の金がかかるということで、それに見合った金しか投入できないということではないのでありまして、代替手段を開発するためには全力投球で行っていく必要があるし、これは大蔵省にも我々はよく相談をして、その対応策をきちっとしていかなければならないというふうに思っているところであります。
  また、自衛隊の経験を、ノウハウを持つ者を全世界に散らばせて地雷の除去に努めたらどうだという考え方でございますけれども、PKFで凍結問題になっております。この問題は言ってみれば地雷の除去等について自衛隊のノウハウを活用するという項目でございますけれども、この法律がどういうふうになっていくのか等々をにらみながら、我々も自衛隊が持っているノウハウを世界の国々のためにどういうふうに役立てることができるのかということについては勉強する必要があろうかと思います。
  御提言を踏まえて、いろいろと勉強させていただきたいというふうに思います。
○山崎力君 非常にすれ違いで残念なんですが、別に自衛隊をやれと言っているわけじゃなくて、金額が膨大になる可能性があるんだと。しかも今、長官おっしゃられましたけれども、代替兵器を開発するのに、百万発の対人地雷に相当する兵器を本来なら四年間で装備しなきゃならぬという話ですよ。そうじやなかったら、同じ意味での戦術効果はないわけだから。それを四年間で開発すればいいでしょうというような長官では私は困ると思う。
  それで、装備するまでに幾らかかるかもわからない。その計算ができないでやるようだったら、私は国民に対しての説明というのはできないのじゃないか。膨大な金がかかるんなら、我が国は百万発の地雷は廃棄しません、そのかわりその分の何百億かかかるような装備のお金で世界の地雷の撤去をしますと言った方が一つの行き方ではないか、それも考えられるんではないかということを言っただけで、PKFその他自衛隊をやろうとしたわけではない。
  時間でございますのでやめさせていただきますが、そういうふうな点でもう少し御検討が、この問題、これからの実施、大蔵省等の先ほどの答弁を含めてあるんだということを指摘して、私の質問をやめさせていただきます。

(後略)