質問「『証拠隠滅調査報告書の問題点』ほか

(平成10年10月15日参議院外交・防衛委員会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 今回のは証拠隠滅に関する内部調査の中間報告でありますから、主に事実関係を明らかにするという点を中心にお伺いしたいと思います。時間が限られておりますので、簡潔にお答え願えればと思います。
  まず、私が報告書を読んでいって一番最初に感じた文章というのは、要するにこれは東通、東洋通信機の問題でいろいろ調べたんだけれども、結論として「過去に決裁を経た返還額に誤りがあったと判断するには至らなかった。」という文章があります。ということは、要するに過去に決裁をしたものが適当であったあるいは正当であったという判断もできなかったという言いかえの言葉だと思うんですが、そういうものなんですか。これはもう一回振り返ってみて、このやったことは正しかったと、あるいはここが間違っていたと言うようなことができない状況に防衛庁の事後調査というのはあったということと判断してよろしいんでしょうか。

○政府委員(伊藤康成君) 御指摘のところは三ページの上段に書いてあるところでございます。四社特に東洋通信機の返還額につきましては、先ほど来申し上げておりますように、調本の対策委員会を中心に各種の検討が行われました。しかしながら、結局まさにここに適切になされなかったと結論づけることはできなかったということが事実でございます。
  今に至ってみますと、当時の調本長とかの人とか、あるいはまたその当時の関係者の一部からの見解ということで当時のやり方が間違っていたということはわかったわけでございますが、内部の段階ではなかなかそこまでははっきりしなかったということを率直に記述したものでございます。
○山崎力君 ということは、これは微妙なんですよね。法務省というか司直の手が入っていろいろ調べられた結果不適当だったというごとは今になって言えるんだけれども、自分たちで当時調べたらそこまでいかなかったんだという内部調査の限界をみずから認められたわけでございます。
  そうするとへ今回のこともそんなところかなというふうな印象を最初から我々としては受けざるを得ないスタートのあれでございまして、その辺のところが、いわゆる内部規律的な面での内部調査の限界があるんだということを認めた上でのことだろうと思うんです。そうすると、やっぱりそこの観点でどうしても見ざるを得ないということを御承知おき願いたいと思います。
  それで、今回の場合、まさに証拠隠滅ということなんですが、その証拠はいろいろあります。ただ、別の観点からいきますと、その証拠というのは言葉を置きかえれば保存資料、残されたいろいろな資料だということだと思うんです。これは役所によっていろいろ内規その他あると思うんですが、いろんな格付があると。永久保存しなきゃいかぬものから、覚書程度で担当者がかわればそこで破棄されてもいいものがある。あるいは一年間とかあるいは案件が処理される、一言でいえば法案が成立されるまではというようなものもあるでしょう。そういったことについての内規というのは防衛庁に当然あると思うんですけれども、その辺について、今回破棄されたものについて、保存を、永久保存はもちろん、当然今の時点において残されていなければならない資料というもののチェックはされたんでしょうか。

○政府委員(伊藤康成君) 四社関連事案、特に東洋通信機等の文書につきまして私どもは中心に調査をしておるわけでございますが、当然のことながら破棄されたあるいは焼却された文書というのは期限切れのものというふうに私どもは聞いておるわけでございます。ただ、その中で全く期限内のものがゼロであったかということまでは今正直申し上げまして言い切る自信はございません。なお調査はしたいと思っております。
  なお申し上げれば、この事案に関連した非常に重要な文書というものは、私どもの認識では大部分が昨年秋以降、東京地検の方に任意提出されておるというふうには認識しておりますけれども、全くゼロだというところまではまだ調査が終わっていない次第でございます。
○山崎力君 法務省の方においで願っておるので、後でお聞きする部分があるんですけれども、要するに今の段階では残されているべき資料の中で破棄された、隠滅されたというものは把握していないと。ただ、そこのところに関しては、法務省へのその他の提出部分、その他があるので、全部、今防衛庁にあるわけでないから確認はできない、このような答弁だろうというふうに理解しております。
  そういった意味で、三ページの下に、五十箱程度の文書を檜町駐屯地から十条駐屯地に移転した際に焼却したということがありますが、その中には保存すべき文書が含まれていなかったというようなことは調べられているんでしょうか。

○政府委員(伊藤康成君) これは、まさに移転のためでございますが、当然のことながらそこで焼却するか、あるいは十条に持っていくかという仕分けの中で、期限の切れたもの、先ほど先生おっしゃいましたように、あるいはそれほど保存を必要としないものも当然あるわけでございまして、そういったものだというふうには聞いております。
  ただ、その中で全く四社関連の資料が含まれていなかったかと申しますと、もう少しこれもまた検討しなければならないと思います。
  ただ、四社の中でも東洋通信機あるいはニコー電子といったようなところにつきましては、実は東京支部の管轄ではございませんので、恐らくその関連の資料はなかったであろうということは申せると思います。
○山崎力君 続いて、いろいろなことがあって、具体的事例についてあるんですが、動機がなかなか見えてこない部分がございます。「押収を避けたいとの意識も働いていたものと思われる。」と中ごろに書いてあります。これはどういう意味なんでしょうか。本人は押収を避けたいという意識を持っていたということを否定しているんだけれども、その対応を客観的に見た場合、どうもそうは思われない、やはりそういう意識が働いていたんではないだろうかというふうに受けとれるんですが、要するにどういうことなんでしょうか。
○政府委員(伊藤康成君) 本人が否定していたと申しますといささか強過ぎるのではないかと私は存じます。聞き取りの段階におきまして、いや、実は押収が嫌だったからというようなことを申した者は多分いなかったと思います。
  ただしかしながら、実際にその資料の移転の対応を見てみますと、もちろんここに書きましたように、勉強を要すとか業務に必要だとか、いろいろ理由は述べているわけでございますが、しかしながら、その移転が捜査の直前であったというような事実を考えますと、やはりこのように判断せざるを得ないのではないかということで記述したものでございます。
○山崎力君 この点非常に重要でございまして、本人の刑事訴追の関係を考えれば無理はない部分もあるんですけれども、内部調査で、おまえ本当にどうしたんだということに対して、少なくとも国防の任に当たる機密保持の重要なところで、そこのところを追及できなかった、客観的な状況から見て明らかにおかしいということも断定し得なかったということは、これは非常に難しい問題は承知の上ですけれども、そういった人たちの集団にこれだけ重要な国防の任に当たる中枢にいてもらっては困るんではないかという気持ちを国民に抱かせる内容でございます。
  その点について、長官、本当にこれはしっかりしていただかないと、機密に関することがあり得るわけでございますから、御留意願いたい。でき れば最終報告のときにその辺のところの対応策をきちっとさせていただきたいと要望申し上げます。
  それからもう一つ、細かい点でちょっと確認させていただきます。
  七ページのところで気になったのは、上段で「藤倉航装(株)については、会社自身原価元帳は作成していない。」と、こう一行ぽんと入っているんですが、こういった原価元帳を作成していないというようなことが、そちらとの契約上許されるものなんでしょうか。

○政府委員(及川耕造君) 防衛庁の装備品の調達は、いわゆる予定価格の算定基準に関する訓令に基づいて予定価格を算定し契約を締結しているわけでございますが、その算定方法につきまして、訓令では、先生おっしゃったいわゆる原価元帳のような標準資料のない場合におきましては、相手方から提出されました見積資料を審査いたしまして予定価格を定めることができるというふうにいたしております。
○山崎力君 それから、これも確認なんですが、八ページやいろいろなところで、昨年十月以降、地検に任意提出されたいろんな資料が出ている、こういうことなんですが、これは原本が出ているんですか、それともコピーが出ているんですか、任意提出は。
○政府委員(伊藤康成君) 原本を提出したものもございます。また、原本のほかにさらにコピーも提出したものもございます。
○山崎力君 そうすると、原則として任意提出するのは、向こう側というか法務省側からすれば原本を要請してきた、こういうふうに認識すればよろしいわけですか。
○政府委員(伊藤康成君) ケースによって当然違いはあったと思いますが、基本的には原本で提出していると思います。ただし、その際、そのコピーをとったというケースはございますが、そのコピーについてもさらに後に提出をしているというケースはあったと承知しております。
○山崎力君 そこで、法務省にお伺いしたいんですが、今回は証拠隠滅という疑惑で言われているわけですけれども、これは捜査中でいろいろ問題あるのかもしれないんですが、まず事実関係として三回防衛庁に家宅捜索が入っているわけですが、その理由、容疑事実ですね、これはすべて共通ですか、それともその都度変わっておりますか。
○政府委員(松尾邦弘君) これまでの間、防衛庁に三回捜索を行っておりますが、そのうち二回は東洋通信機の背任の事案、もう一回はニコー電子関係の現在捜査中の事案でございます。
○山崎力君 ニコー電子の場合は、容疑は何でございますか。
○政府委員(松尾邦弘君) 東洋通信機の背任事案と形態は同じでございます。被疑事実としては罪名は背任でございます。
○山崎力君 そういった中で背任の、これは形としてはあれなんですが、事務次官室まで対象になったということは、これは極めて証拠隠滅ではないということで、等がついていれば、背任等であればこれはまた別かもしれませんけれども、そういった点で法務省の方にお伺いしたいんですが、現時点までの証拠物件、今捜査中、点検中だろうと思いますけれども、証拠隠滅といいますか、そこまで言うと言い過ぎになるので言葉をかえれば、当然防衛庁にあるべき資料で押収物の中にない、改めてこの文書、資料の提出を、あれば求める、なければ捜索するというような予定というものは現在そちらの方で把握されていますでしょうか。
○政府委員(松尾邦弘君) 東洋通信機の事案については既に起訴しまして、今公判の準備中でございます。
  ニコー電子については、現在被疑事件として鋭意捜査中ということでございまして、その証拠関係の収集あるいは供述等の収集といいますか、そういったものがいかなる状況にあるか、あるいは困った状況にあるのか、あるいは十分なのか不十分なのか、お尋ねでございますが、いずれにしても今捜査進行中の事案にかかわる御質問でございますので、お答えいたしかねることになろうかと思います。
○山崎力君 これは念のためですが、一応起訴はされているわけですから、そこのところで、ニコーの方は残っているということなんですけれども、証拠隠滅という言葉と別に、これは先ほどそういったことはまず今のところ防衛庁では把握されていないということなんですが、保存すべき文書が隠されていたとすれば、これはある意味では公文書の投棄の別の罪名になる部分もあろうかと思います。
  私は、何回も背任の前に詐欺があるんじゃないかというふうに申してきましたけれども、その辺の法律的な運用の問題点というのも、こういう役所、行政と絡んだときにゆがめられているんではないだろうかという感じを私自身持っておりますので、その辺は法務省としても御留意願いたいと御要望を申し上げます。
  最後に、防衛庁長官にお伺いします。
  先ほど同僚の田村委員からもいろいろな点で、特に基本的な部分で指摘がございました。確かにそういった点でのお気持ちはわかるんですが、専門家を経験された田村委員からの指摘という部分。本当に実態を見たら、要するに、知らない人から見れば当たり前のことなんだけれども、内情を知っている者からすれば、何をやるつもりなんだ、本当に石川島播磨以外にジェットエンジンをつくらせる気か、こういうことになるわけでございまして、それは金額が膨大になるところです。
  そういった意味で、役所として今回の事案を本当に考えるならば、もう少し御自身の今回に対する気持ちを政治家としてはっきりさせた方が、将来の日本の防衛あるいは行政に対する国民の信頼感を回復させるのではないかと私は思っております。
  そういった意味で、最後の質問者として、現時点における言い得る限りの防衛庁長官としての出処進退についてのお考えを御披露願うことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(額賀福志郎君) 今回の中間報告につきましては、一連の背任事件等をめぐる信頼失墜をどうやって回復するかということから防衛庁内部で調査をしてきて、今の時点の中間報告をさせていただいたわけであります。
  引き続いて調査をし、そしてしかるべき厳正な処置をとっていくと同時に、今後乙ういうことが起こることがないようにしていくことが大切であるというふうに思っております。
  今後、私といたしましては、身を捨てて、冷静に物事を見ながら、今言ったようなことをきちっと対策を立ててまいりたいというふうに思っております。

(後略)