質問「アジアの安全保障について

(平成11年2月3日参議院国際問題に関する調査会会議録より抜粋)


(前略)
○山崎力君 両参考人に共通で、ちょっとお伺いしたいと思います。
  一つは、長期的なアジアの安全という情勢の中の中核にある中国の動向ですが、これを大きく今後左右するというのは中国の経済状況が大きなファクターになるだろうと。どういうふうに経済発展するのかしないのか、中国の内部格差の是正の問題、いろいろ細かいことはあると思うんですが、一番大づかみに見てそこのところが難しいというか足かせになりかねないのは、私はエネルギーの問題だろうと思うんです。
  特に、石油の輸入国になったということ、これが大きくどういうふうに影響するのかというのが不確定要素として出てきている状況だろうと思うんですが、ここ十年、二十年先、そういった中での中国のエネルギー事情、石油に対する要求をどのように思っているかということをお聞かせ願いたいという点が一点。
  それからもう一つは朝鮮半島絡みですが、私個人は、今度のいろいろな一連の朝鮮の問題について、日本から能動的な行動はすべきではない、米韓のコンセンサスのもとに後をくっついていけばいいという基本的な考え方を持っておりますが、その点についての御意見をお伺いしたい。
  それからもう一つ、一番シリアスな状況というのは、我々にとっては、北側が核を持ち、それで有効的なミサイルを装備した、これがアメリカに届く、あるいは日本に確実に届くというようなときにアメリカがどう対応するのか、もっと具体的に言えば、その場合アメリカが先制攻撃をする気があるのかないのかということが一番大きな不安要因だと思うんです。
  そういったときに、アメリカという国は、簡単に言えば大義名分がなければ、それなりの大義名分をつけなければしないと。この間のイラクに対する攻撃も、再三警告をして、休戦協定の監視、大量破壊兵器の監視のあれを邪魔したということが一応大義名分になって攻撃したわけですが、そのときの大義名分は何ぞやといったときに、朝鮮戦争の休戦協定違反、あるいはそういったときの信義則の休戦協定を単に破棄したことにあるということでできるのだろうかどうなんだろうかということを私は感じておりまして、その点について御存じであれば教えていただきたい。
  以上、三点をお願いしたいと思います。

○参考人(船橋洋一君) 中国のエネルギー、余り詳しいことを知りませんけれども、純輸入国にはもう既になっているわけですね。それから、中国がペルーとか、既に石油の開発国として海外に出ていますけれども、これがイラクであるとかイランであるとかそういうところに直接出てDDの取引もしようと。それから、上流のプレーヤーとしても中国が出てくるというようなところもあると思うんですね。さらに、中国も自主輸入原油を増大させたとしても、相当長期にわたって石油輸入国であり続けるとして、そのシーレーン、オイルレーンのセキュリティー、それに対して海軍増強に対する関心がさらに強まると。最後に、それとまた関連して、南シナ海であるとか尖閣も含めた領土問題への意味合い、非常に錯綜した複合的なピクチャーになってくると思うんですね。
  私は、そういう中国、日本も同じような石油輸入国で過当競争しない、できれば中東でも一緒に共同開発しようじゃないかというようなジョイントベンチャーの考え方、それから中国の省エネをとことん手伝うと。ですから今、対中円借、これを根本的に考え直さなきゃいけないと思いますけれども、もうすべて環境と省エネのみにする、あとは一切しないというようなことで、やはり中国自身の省エネもとことん進めさせるというようなこととか、単に安全保障じゃない非常に総合的なアプローチが必要になってくると思いますね。
  第二点の米韓のしりについていく、これはちょっとどういう意味合いでおっしゃったのかわかりにくいんですけれども、私は、米韓が北に対して軍事オペレーションをやるのに日本はついていく必要は全くないと思います。軍事オペレーション、戦闘行為は日本はするべきではないと思っておりますし、ですから、意味合いは多分後方支援ということかとも思いますけれども。
  ただ、日本は今まででしたら米韓の後を追っていくというようなことで距離感ほどほどであったと思うんですけれども、やはりノドン、テポドン、あれ以来、私は、日本の安全保障は韓国の安全保障と相当程度ダブってきたと。それまでは、朝鮮半島問題というのは日本にとって安全保障関連問題であったと。しかし、今や安全保障問題そのものであるというふうに思いますね。ですから、単に米韓の後を追うというのではなくて、最初から米韓と政策協議を進めていく、情報も交換するということが必要になってきていると思います。
  最後、ここは私もよくわかりませんけれども、先ほど申し上げましたように、アメリカは今相当なことがあっても軍事行動することをオプションとして考えていないのではないかというふうに見ております。
○参考人(岡崎久彦君) 初めのエネルギーのお話でございますけれども、エネルギーが中国の経済発展の障害になるかどうか。
  現状では石油がちょっと過剰生産気味でございまして、それで安くなっておりますので、こういう状況が続けば別に外から買っても大した問題はございませんけれども、これが続きますとどうしても湾岸依存度がふえてまいりまして、湾岸依存度が恐らく九割を超してくるんだろうと思うんです。その場合に、もし何かあると今度は逆に急騰する、そういうこともあります。これは中国だけの問題ではございません。日本も中国も全部同じ問題でございます。ただ、それを中国がしのげるかどうかという問題でございますけれども、中国が莫大な石炭の埋蔵量を持っておりますので、それでエネルギーを転換することは可能だろうと思います。
  結果としては、そういう経済変動があればそれは経済成長に若干の影響はあると思いますけれども、だからといって経済成長がとまるということはないと思います。経済成長のファンダメンタルである労働力の質、それともともと低いところからスタートしているという成長余力、これがまだございますので、まだまだこれから経済成長すると考えていいと思います。それが第一点でございます。
  それから、アメリカと韓国についていった方がいい、私は全くそういう意見でございます。
  これは、戦争が起こった場合、何か動乱が起こった場合、それによって起こるリスク、これが韓国がこうむるリスク、アメリカがこうむるリスクに比べて日本のリスクは極めて少ないんです。最悪の場合に、ミサイルが二発飛んでくると。それだけでもこれは重大なことでございますけれども、それは朝鮮戦争の場合の韓国の被害それからアメリカ軍の被害、それに比べれば比較的小さいわけです。
  ですから、やっぱり同盟国であり友好国である両国の意向をいつも尊重して、その意向についてできる限りの範囲で協力していくというのが私は日本の基本姿勢だと思っております。それは、自主的にとかいろいろ議論はございますけれども、私は基本的にはその方が正しいと思っております。
  それから、最後に攻撃でございます。これは可能性があればアメリカはするのにやぶさかではないと思うのでございますけれども、北朝鮮の場合はたしか技術的にもうほとんど不可能だというふうに言われております。これは深い穴を掘っているということなんでしょうね。それで、イスラエルがイラクを攻撃したような、それからまた今回アメリカがイラクを攻撃している、それからその前にテロに対してスーダンとかイランを攻撃した、ああいう攻撃を実施する能力は十分持っていない、そう判断されます。
(後略)