質問「『周辺事態時の海上保安庁の任務』他

(平成11年3月8日参議院予算委員会会議録より抜粋)


(前略)
○理事(竹山裕君) 次に、山崎力君の質疑を行います。山崎力君。
○山崎力君 この問題をずっと聞いておりまして、
やはり一番のポイントというのはどうしても集団的自衛権の問題に帰着するんではないかと思うんです。
  せんだっての予算委員会だったと思いますが、集団的自衛権の放棄といいますか、認めていない国はあるのかという質問に対して、外務大臣は例えばスイスがというふうなことをおっしゃいました。それで、若干調べさせていただいたんですが、要するに憲法で明示はしていないんだけれども、国の国是としての中立政策、条約を結んでの、それの帰結として集団的自衛権は使えない状況になっておるというような報告がございました。
  スウェーデンは若干違うようでございますけれども、要するに集団的自衛権を放棄するという問題は、中立政策、いわゆる中立国になるということであるならば非常にわかりやすいんですが、どこを見ても我が国は中立国ではないと考えられるわけで、日米同盟という言葉もあるくらいです。そういった中で集団的自衛権を認めないという法体系を持つということが果たして可能なんだろうかどうなんだろうかという改めての疑問が生じているわけですが、御見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(高村正彦君) 中立国でなくて集団的自衛権の行使を制限しているという国がほかにあるかと言われれば、私も知らないわけでありますけれども、現実に日本はそういうことで長いことやってきたわけであります。そして、集団的自衛権の定義がこの前も申し上げましたように実力をもって阻止する権利、これは個別的自衛権もそうですが、最後は実力をもって阻止する権利、そこの行使を制限しながら、やはり中立国でない、ある国と同盟を結ぶ、日本としてはそういう道、珍しいといえば珍しいんですが、我が国の憲法のもとでこういう道を歩んでいるわけでございます。
    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
○山崎力君 お認めになったように、珍しいという言葉を言いかえれば特殊だということに相なるわけですが、その場合、我が国はそう思っているんだけれども、ほかの国から見てどうなのか。
  国際関係というのはまさにそういった形ですから、そういった中において、我が国はこういうみずから手を縛った、集団的自衛権をみずから行使することはないんだと言っているという政府側の見解はそれはそれとして、対外的に見てそういったことがいわゆる国際法上一般的に、何せ特殊だ、珍しいというわけですから、世界的に認められているものなんでしょうか、どうなんでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 今、国際法上と言われましたが、国際法上ということでなくて事実上の問題として、日本がこういう憲法を持ってこういう政策を持ってやっているということは国際的にかなり知られていることで、逆にもし日本がこれから集団自衛権は行使しますよというようなことを言ったらびっくりする周辺諸国も随分あるのではないか、こういうふうに思います。
○山崎力君 逆に言えば、片務性だから集団的自衛権の行使に日米安保条約は違反しないんだということになろうかと思うんですけれども、ある意味において米軍が日本の防衛だけに日本の基地使用をするんだ、それ以外のことには一切使用しないんだということを明言しているんでしょうか。
○国務大臣(高村正彦君) 安保条約には五条と六条がありますから、六条の場合は極東の平和と安全のために使用することもあると承知しております。
○山崎力君 ということになれば、まさに日本だけではなくて日本周辺の極東においてアメリカ軍が、これは国連軍と言いかえてもいい部分もあろうかと思うんですが、日本の基地を使用する、そのときに武力行使をするということは当然予想されるわけでございます。
  そういったものが果たして対外的に見て、日米安保条約は日本が幾らそうは言っても、集団的自衛権をきちっとした形で、日本が言うとおりの形でやっているとは思えない。要するに、珍しい変則的なことをただやっているだけであって、国際的な関係の中においてやるときにはやるんだろう、ただ平時においてというか何かないときはそう言って、適当に自分たちのことを国内的に言っているだけではないのかというふうに私は見られているんじゃないかなという危惧を否定できないわけでございます。
  これは今回の議論を通じても本当に感じていることなんですが、そこのところで、あるんだけれども行使についてはこういう制約を加えると言った方が、同僚議員から前にも同じ主張があったと思うんですが、その方がよっぽど対外的には理解してもらえるんじゃないかなという気が私自身ぬぐえないわけですけれども、その辺についてこれからまた議論の余地があるかと思いますが、現時点でそういう考え方を持っている議員がいるということに関して、御見解があれば伺いたいと思います。

○国務大臣(高村正彦君) 集団的自衛権の定義は実力をもって阻止する権利、これは個別的自衛権も最後は実力をもって阻止する権利でありますから、基地を提供したことが即実力をもって阻止したことにはならないというわけでありますが、委員御指摘のように、日本が武力攻撃された場合だけでなくて極東の平和と安全のために日本の基地を米軍が使用することがあるのは、それはそのとおりでありますし、その場合には当然事前協議という問題にもなってくるわけであります。
  そういう場合、日本は、国連中心主義で日本の平和と安全を守るということと、もう一つは日米安全保障条約で日本の平和と安全を守るということと、また自衛隊の節度ある防衛力を整備する、そういうこともやってきているわけでありますが、日本が日米安全保障条約を守る中で日本の憲法をどう生かしていくかとすれば、今のような解釈でずっとやってきた、こういうことでありますのでぜひ御理解を賜りたい、こう思います。
○山崎力君 がらっと話題を変えまして、非常に具体的な問題で海上保安庁の方になるんでしょうが、ちょっと具体例でお伺いしたいんです。
  周辺事態のときに、海上保安庁の任務及び活動というものは平時と変化するんでしょうか、しないんでしょうか。

○政府委員(楠木行雄君) お答えいたします。
  海上保安庁は、海上の安全及び治安の確保を任務とする警察機関といたしまして、法令の海上における励行、あるいは海難救助、海洋汚染の防止、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕等の事務を行っておるところでございます。
  例えば日本海側におきましては、平素から必要な海域に巡視船艇、航空機、こういうものを配備いたしまして、日韓漁業協定の取り締まりとかあるいは不法入国事犯の取り締まり、海難救助等の業務を行うとともに、一般通航船舶の航行の安全に影響を及ぼし得る情報を得た場合等におきましては、その安全を確保するため航行警報を発する等の措置を講じているところでございます。
  先生お尋ねの、周辺事態に際して海上保安庁がとることとなる具体的対応措置につきましては、周辺事態安全確保法案の第四条の基本計画が決定される際に、事案に応じて、今申し上げましたような海上保安庁の任務及び所掌事務、体制等を勘案して現行法令に基づき具体的にいかなる対応が可能であるか検討されるものと認識しております。
○山崎力君 いろいろ長くおっしゃいましたが、要するに現時点では決まっていないと解釈してよろしいのでしょうか。
○政府委員(楠木行雄君) 基本法におきましては、私どもは関係行政機関ということになりますので、特に内閣が関与することによりまして総合的かつ効果的に実施する必要があるものとして私どもの仕事が基本計画に盛り込まれる、こういうことになるわけでございますが、そのときの状況とか四囲の情勢によって違うとは思いますけれども、今申し上げました平素の対応を参考に決定されるものと考えております。
○山崎力君 長々と答弁されるのはいいんですけれども、要するに平時と変わるのか変わらないかと聞いているんですから、まだそこの具体的なところ、変わるか変わらないかは決まっておりませんということなのかなと理解したんですが、またそうでもなくいろいろおっしゃっているんですけれども、私の質問したいところは、要するに変わるのか変わらないのかということですから、次の問題ではないわけで、その辺のところを短く的確にお答え願えればと思います。
  そういった中で、具体的なことで言えば、例えば我が国の排他的経済水域、そこのところの権益を守るために海上保安庁はある程度特殊な役割をするわけですが、そのときに周辺事態が発生した場合どうするのというようなこともあるわけです。だから、そういう具体的なことがどんどん出てくるときに、大きな方針を、ある程度めどを聞かせていただかないと細かい内容まで入っていけない、考え方に入っていけないということがあるわけで、その辺を御理解願って御答弁願えればと思うわけです。
  具体的な問題として防衛庁さんにお伺いしたいんですが、周辺事態におけるいわゆる捜索・救難活動、これは対象者がだれであっても、いわゆる民間人でも、アメリカの軍人でも国連軍の兵士でも、はたまた某国の、敵対国の軍人であっても、これは変わるんでしょうか、対応が変わらないんでしょうか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 御案内のとおり、後方地域捜索救助活動は、戦闘行為により遭難した戦闘参加者を救助することを目的としたものであります。
  この場合、人道的な観点から、平和及び安全の回復のための活動に従事する米軍以外の戦闘参加者も救助の対象としているところであります。また、後方地域捜索救助活動の対象である戦闘参加者には民間人は一般に含まれないと解されておりますが、後方地域捜索救助活動を実施する場合には、戦闘参加者以外の遭難者があるときはこれを救助するものとしているところであります。
○山崎力君 ということは、このことはどちらかというと、いわゆる戦闘行為に付随する、周辺事態であったとしてですが、それに付随する自衛隊の協力というよりも、むしろいわゆる人道的見地から安全な場所だったならばそういった人をできるだけ救助しましょうよという立場からの行為ではないかなと、そう考えた方が素直ではないかという気がするわけです。
  端的に言えば、周辺事態かどうかは別として、そこまで認定するかは別として、自衛隊あるいは海上保安庁の救難でもいいわけですが、そういう戦争に巻き込まれない、戦闘に巻き込まれない地域であれば今度の周辺事態法その他に関係なくてもこれはやれるべきだし、やれるような法制度を整えるべきではないか。
  私自身の感覚からすれば、この問題というのはむしろ今回とは別の法体系の中でやるべきものではないかなというふうに考えておる次第であります。その辺のところが、もし御検討するあれがあれば次の機会にでもお答え願えればと思うんです。
  それでもう一つ異質なのは、今回のことで伝えられているところによると異質なのは、あくまでも国連安保理の決議があって初めてというのが一つだけ行為としてございます。臨検とか検査活動とか、そういった表現になされておりますが、それはそれとして、ちょっと振り返ってみますと、これは周辺事態なわけですが、日本有事の国連決議がまだないときに、いわゆる日本に対する侵攻国といいますか、交戦状態にある国に向かう船舶の検査を日本単独で憲法上可能なのかどうなのかということがちょっと議論されていない、抜けている部分ではないかと思うんですが、その辺はどうなっておりますか。

○国務大臣(野呂田芳成君) 委員が簡単におっしゃればそうでありますが、日本侵略のために向かっておる軍艦かどうかということはなかなかこれ……
○山崎力君 いえ、違う。質問を理解していない。○国務大臣(野呂田芳成君) そうしたら、どういう意味でおっしゃったのでございましょうか。
○委員長(倉田寛之君) それではもう一度、長官、お席に戻られて、質疑者に含意を伝えていただきます。
○山崎力君 要するに、日本に向かっている船ではなくて、日本に侵略している某国、交戦、日本有事の際の侵略対象国である某国に向かう船舶です。
  要するに、簡単な表現をすれば、日本へ落とす爆弾をその某国へ運ぶような船、それらしき船を見つけたときに、それに対しての国連決議がないときに日本が単独の国家行動としてその船の行動といいますか、あれを検査することができるか、こういうことです。

○政府委員(柳澤協二君) 非常に仮定の個別のケースでございますので、一概にお答えは難しいとは思いますが、一般的に申しますれば、いわゆる我が国有事でございますが、我が国の防衛のために必要な範囲で、要するに挙げられたようなケースでそうした行動をとることが我が国の防衛にとって不可欠な行為であるというようなケースであれば可能であると私どもは考えております。
○山崎力君 これはちょっと非常に微妙な問題でございまして、一般に船舶臨検と言われるのは、国際法上交戦国が第三国、中立国の船舶に対して、自国の安全その他に影響があると思料した場合、中立国の船舶であってもこれを臨検することができると。我が国周辺においては戦前の浅間丸事件というのが有名な事件として記録されているわけです。そのときは、浅間丸に乗船していた敵性外国人ドイツ人をイギリスの巡洋艦、重巡に臨検によって拘束されたという事案ですけれども、これは一般的に、私の解するところ、国の交戦権の一つの権利であるというふうに理解されているんですが、その辺を含めて、「国の交戦権は、これを認めない。」という九条二項の関連がどうなるのかというのが疑問で質問しているわけですが、いかがでございましょうか。
○政府委員(大森政輔君) お尋ねは、要するに、我が国有事の際に、我が国に対する侵攻国に対して何らかの支援をしようとしている船舶に対する検査、こういうことであろうと思いますが、その場合には、憲法九条は、我が国を防衛するための最小限度の自衛行動というものは当然の前提として認めているわけでございますから、そのような我が国の自衛行動としてどうしても必要だということになれば、それは検査ができるわけでございまして、これは決して憲法九条二項が否定している交戦権に当たるというようなものではない、またこれは国連の決議がなければできないというようなものでもないというふうに考えます。
○山崎力君 そうすると、我が憲法九条における交戦権という意味はどういうことになるんでしょうか。法科で三十年以上前に私もちょっと聞いた記憶があるんですが、あそこに書かれた交戦権というものの意味合いはどういうことになるんでしょうか。
○政府委員(大森政輔君) 交戦権の定義いかんということでございますが、政府は従前から、この交戦権というのは戦いを交える権利という意味ではないと。交戦権は、国際法上有する種々の権利の総称であって、相手国兵力の殺傷及び破壊、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、中立船舶の臨検、敵性船舶の拿捕、このあたりが関係するんでしょうけれども、等を行うことを含むものである。こういうふうに説明しているわけでございますが、先ほど御答弁いたしましたように、当該船舶の検査が我が国を防衛するために必要最小限度の自衛行動として必要という場合には、交戦権はこれを有しないという交戦権には当たらないんだ、当然なし得ることになるんだということでございます。
○山崎力君 例示しているわけですよね、あのときに、中立国の検査あるいは拿捕。それが自衛権であるということであるならば、我が国が自衛戦争をするということであるならば、その条文はまさに無意味だと。あそこに書かれた九条二項の交戦権を有しないということは、まさに中身のない無意味な文章がそこにあるということになりませんか。
  自衛戦争において交戦国の占領あるいはそこへの軍政等の施行ということも、当然自衛戦争である以上、理論的には可能かもしれませんけれども、そこへ行って占領してそこで軍政をしく権利というものはあり得ないわけです。そうすると、今列挙されたことというのは、正直言って交戦権を有しないというのは全く無意味な規定になりはしないんでしょうか。

○政府委員(大森政輔君) そこが個別的自衛権に基づく自衛行動と、それから自衛戦争の違いでございまして、先ほど私が申し上げましたのは、個別的自衛権に基づく我が国を防衛するために必要最小限度の自衛行動というものは憲法が否定していないということを申し上げたのでございまして、いわゆる戦争の三分類による自衛戦争ができるんだということを申し上げたわけではないと。自衛戦争という場合には当然交戦権が伴うんでしょうけれども、先ほど我が国がなし得ると申し上げましたのは、自衛戦争という意味よりももう少し縮減された、あるいは次元の異なる個別的自衛権に基づく自衛行動というふうにお聞き取りいただきたいと思います。
○山崎力君 非常にわかりづらいんですが、自衛行動と自衛戦争がどこが違うかということは、これはちょっと質問通告をしていないんですが、これは国際法的に認められた概念の違いなんでしょうか、もしわかれば。──すぐぱっと専門家でも頭に出てこないということは、これはなかなか難しいことだろうと思うんですが、僕も自衛戦争と自衛行動とどこが違うのかという議論をこれからせにゃいかぬのかと思うと大変ちょっと気が重くなるんです。
  そこのところはきょうはそこまでといたしまして、最後にですが、法制局長官、今いろいろお答えになっていましたけれども、こういった国会答弁の性格で、今お答えになっている立場というのは閣僚と同格の立場なんでしょうか、それとも政府委員としてなんでしょうか。

○政府委員(大森政輔君) 私は、事前に質疑通告を受け、質問をいただくからお答えしているわけでございますが、あるいはそれに尽きるのかもしれません。
  ただ、もう少し正面から答えさせていただきますと、内閣法制局と申しますのは、二つの所掌事務がある。一つは内閣提出の法律案等を審査すること。もう一つが、法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べるという二つの大きな仕事を与えられているわけでございます。そこで私がこのような法律問題に関して、内閣を補佐する立場において誠心誠意与えられた職責を果たしているということがお答えでございます。
○山崎力君 突然でちょっと毛色の変わった質問で申しわけございませんでした。ただ、これは、今の自自連立内閣の一つの懸案である行政改革に伴う、政府委員をどこまでどうするかということに絡んでまいりまして、今までのこういった問題からいきますと、極めて内閣法制局長官が、次の状態によって答弁者としての立場が違ってくる可能性が十分あるということで、今この機会にお聞きした次第でございます。
  今後ともそういった点での審議というもの、いろいろ初めて聞くような言葉も多いものでございますから、これからまたさせていただくということで、時間でございますので質問を終えさせていただきます。

○委員長(倉田寛之君) 以上で山崎力君の質疑は終了いたしました。(拍手)
(後略)